給食の牛乳のせいだろうか。 放課後、忘れ物を取りに誰もいない教室に戻ったとき、おなかから重低音がひびいた。 ずっと便秘気味だったのに…なんでこんなときに、突然… 気持ち悪い汗が噴き出す。 『ここは3階だけど…今は工事中だから…1階のトイレまで、…間に合うかな…?? もし漏らして、誰かに見つかったら…』 そう思うと余計に汗が噴き出し、おなかのうごめきは激しくなる。我慢できない。 まだ、男子たちは何人か残って校庭で遊んでるらしい。 あたしの目に、一つのランドセルが入った。 あれは、リュウトのだ…!! あたしはいじめられていた。ほかの女子より目立っていたせいだろうか。 いじめてくる男子は何人もいたが、リーダーはリュウト。乱暴で、がさつで、大嫌いだった。 あの、いやなリュウトに、ふくしゅうしてやる…!! そう決断すると、後は早かった。自分でもびっくりするくらいだった。 リュウトのランドセルを開けると、中身を全部床にばらまいて、からっぽにした。 ランドセルを床に置き、口を上にして両脚ではさむ。 そのまま、スパッツとパンツを一緒に下ろして座った。まるで洋式便器のように。 スカートで隠れてるから、においもすぐには漏れないんじゃないかな? おなかに力を入れる。顔が赤くなるのが自分でもわかる。 『ふ…うんっ……う〜ん〜!』 「ぷぅ…プスッ…」 ダメだ…。おならしか出ない。教室でうんこするという緊張のせいか、お尻の穴が開かない。 でも中断して、このままトイレに走ると…漏らすんだ。絶対。 きりきり痛むおなかをおさえながら、ゆっくり考える。 『このランドセルも――』 『おバカなリュウトに使われるより、あたしの便器になったほうが幸せじゃん♪』 『昔のお姫様って、箱におトイレしてたんだし…』 そんなことを考えると、お尻の穴をおさえてた力が自然に抜けた。 「しゃああ…」 おなかが痛くて気がつかなかったけど、おしっこがたまってたみたい。一気にあふれだした。 ランドセルの底に水がたまる音がする。 水音をきいていると「おしっこしちゃった」実感が出て、ますますお尻の穴がゆるんだ。 「ブッ…ブプッ…」 限界になっていたお尻の穴が開いた。一度開くと、おなかにたまっていたものが、すごい勢いで噴き出した。 「ブー」とか「プー」とか間の抜けたおならと一緒に、次々にランドセルの中に落ちていく。 『ちょっと、軟らかめかな?下痢だと思ってたけど…』 勢いよく、かなりの量を出しきると、おなかの痛みはなくなっていた。 『ふぅ……しちゃった…』 ちょっと呆然。 すっきりして、ここが教室ということも忘れて、幸せな気分になる。 なにげなく周りを見ると、さっき床にばらまいたリュウトの教科書やノート、プリントが目に入る。 その中にひときわぐしゃぐしゃな紙があった。お尻を上げ、拾って開いてみた。 ――――15点。わ、ひどい点数。 『この紙も、こんなおバカなテスト用紙として使われてかわいそう。それよりも―――』 テスト用紙をくしゃくしゃと丸めて、やわらかくする。 学校のテスト用紙、あんまりいい紙じゃないけど、それでよかったんだ。 すっかり軟らかくなった紙を、お尻にまわした。 丁寧にお尻の穴と、お尻の周りをふき取ると、用済みのうんこがべっとりついた紙を丸める。 やわらかいうんこだったけど、一気に出たせいであんまりお尻は汚れなかった。 丸めた紙を床に置き、パンツとスパッツを、今度は別々にゆっくりと上げる。 スカートをもぞもぞ直しながら後ろを振り返ってみると、 『うあ…』 ランドセルいっぱいのうん…の山。トイレだったら流れないんじゃないかな。 これがさっきまであたしのおなかで暴れてたんだ… おなかが軽くなって、気分は爽快だった。それに、あの乱暴なリュウトをやっつけた感じ。 『成敗!!』 なんか、正義のヒロインになった気分。 『うわっ。くさっ!』 においで我に返った。トイレでするのとは違って、すごいにおいがする。 …ああ、いけない。早く教室から離れないと。 ランドセルを元に戻し、急いで教室からでると、誰かが階段を上ってくる足音がきこえた。 『やばっ』 誰もいない隣の教室に、あわてて身を隠す。 階段を上ってきたのは、リュウトだった。 そのままリュウトが、自分の教室に入るのがみえた。 しばらくして、今まで見たことのない泣き顔で、リュウトが教室から出てきた。 あたしのうん…がいっぱいつまったランドセルを抱えて。 半泣きで、顔を真っ赤にしたリュウトは、廊下の窓を開け、ランドセルを投げ捨てる……かにみえた。 何を思ったか、混乱したリュウトは、開いた窓からランドセルを出して思いっきり振った。 3階から放り出されたランドセルの中身、つまりうん…は空中で飛び散り、 勢いよく広がりながら落ちていった。 下では、同じクラスの男子たちがたくさん遊んでいた。 その後、教室にうんちまみれのテスト用紙が落ちていたことから、「突発ウンコ落下事件」 の犯人がリュウトだと決めつけられ―――― こうして、あたしのクラスで起きたちょっとした事件は終わった。