under the rose

明楽の入学式・8

「よし、全員プリントは回ったな? 3枚目の……」
「先生、足りませーん」
「っと……おや、済まん、こっちにあるんで取りに来てくれ」
 机の上のプリントの束を漁ってから、教諭が説明を続けてゆく。一年の行事や注意、早速明日から始まる授業、教科書の配布。てきぱきと進められていく初日のホームルームは、明楽の耳を右から左へと通り抜けてゆく。
(っ……おさまって、おさまってよぉ……っお願いぃ……っ)
 12歳の少女が強いられるにはあまりに過酷な排泄衝動。ほとんど治まることもないそれは、断続的に激しい腹音を響かせ、猛烈な便意を叩きつけてくる。痛いほどの羞恥を感じながら、言うことを聞かないおなかを必死になってさすり、明楽は再度の発作が起きないよう祈る。
 だが……
「は…っ、はっ、はーっ、はふっ、はぁっ」
 ぎゅるぎゅるとねじり上げられる下腹部のうねり。もはや蠕動と呼ぶこともはばかられるような排泄器官の脈動は、まるでそこにひとつの生き物がうねっているかのようだ。
 一週間にも渡って蓄積されてきた排泄物は、汚らしいガス音を響かせて少女の腸内で暴れ回る。
 ぷぴっ、ぷぴゅ…ぶるっ、と絶え間なく音を漏らし続ける排泄孔はひっきりなしに盛り上がり、直腸を限界まで拡張して押し込められた中身を吐き出そうとする。

 ぐるるるぎゅるるるっぐぐううぅ、ごぽっ。

「うぁ……く、ふぁ……」
(おトイレ……うんち、うんちぃ、でちゃうっ……)
 全身全霊、思考の一片たりとも余すところなく総動員して、明楽は腹奥から込み上げてくる凶暴な排泄衝動に抗う。それでも時折我慢しきれずに漏れ出してしまうガスが、ひっきりなしにヒクつく排泄孔ではしたない音を立てる。ひり出されるモノはもはや気体だけとは言いきれず、明らかにガス以外の熱く湿ったなにかを吐き出すような汚らしい音を伴っていた。

 ぶぷっ、ぶぴりゅるっ!!

 そのたびにこの世のものとは思えない悪臭を漂わせる明楽は、だらしなく排泄孔が緩むたび、懸命に身体をよじってその腐臭を散らそうとしていた。
 少量ずつとは言え、自制をなくして立て続けにガスを漏らしてしまっている明楽のお腹は、もはやこのまま排泄をはじめてもおかしくなかった。すっかり柔らかくなった排泄孔はわずかな刺激だけで下着の中に汚らしい茶色の塊を吐きだそうとしている。

 ぷぷっ……ぷすっ……ぷちゅるっ……

 腸粘液でぬめる排泄孔はその内側の肉色が解るほどに盛り上がり、粘膜部分を外気に晒している。長時間酷使されてすっかり赤くなった腸粘膜はじんじんと疼き、むず痒さを伴って排泄欲を助長させている。
 ぱくぱくと口を開く排泄孔は、明楽が溜め込んだ排泄物を溶かした粘液をじわりじわりと漏らし、ぷちゅぷちゅと茶色い泡を立て、明楽の下着に隠しようもない茶色の染みを作っている。
 汗でぐっしょりと湿った感触のせいで、明楽はその汚れが何によるものなのか理解できずにいた。
「っは、……っふっ……っふ……」
 きりきりと高まりながら断続的に打ちつけられる排泄欲を堪えるたび、明楽の背筋がくねり、腰が揺れ、ぎゅっと閉じられた脚が硬直し、体重を乗せられた椅子がぎしぎしと軋む。
 額に首筋に汗を滲ませ、ハンカチを握り締めて息を詰める様子はまるで出産を控えた妊婦のような有様。しかし明楽が耐えに耐えておなかの中に抱え込んでいるものは、新たな生命などというモノとは正反対の、穢れた存在。溜め込んだ食物のなれの果てがこねくり回され、腐り果てた残りカスだ。
(やだ……なんで、なんで、わたし……っ……今日、入学式だったのに……っ、今日から、もうオトナ、なのにっ……)
 きちんとトイレに行くこともできず、、きちんと我慢もできない。うねる下腹部がまるで自分の未熟さの証のようで、すでに明楽のプライドはズタズタだった。
 とにかく一刻も早くこの場所から解放されて、うんちを済ませたい。おなかの中のうんちを残らず出してしまいたい。そのことしか考えることができない。
(ぁ、あッ、ダメッ!! ッで、でちゃ…うぅぅ……ッッ!!!)

 ぷ、ぷちゅっ、ぷちゅるッ……ぷすっ、ぷぅぅ……

 またも悪臭を撒き散らす明楽の排泄孔だが、当の明楽はそんな状況に構う余力がない。直腸に硬く詰まった便塊が孔内部にとどまっていることが、明楽の唯一のオモラシへの免罪符だ。
 すでに疲弊した括約筋はとうの昔に限界で、いつ力尽きてもおかしくない。わずかに緩んでガスを漏らす刺激さえ危険なものだ。ほんの少しでも油断すれば、たちまちのうちに下劣な卑肉の管と成り果てた明楽の排泄器官は、小さなおなかの中に辛うじて留めている汚辱の塊を残らず吐き出してしまうに違いない。
 蠕動運動で程良くこね上げられた直腸が折りたたまれては引き伸ばされ、次々と粘液にまみれた固形のうんちの塊が押し寄せてくる。もうこれ以上入らない場所に無理矢理ごつごつとした塊を押し込まれ、まるで排泄孔を犯されているかのような有様だ。
(ぁ、あっあっ、ま、待って、ダメ、だめぇ……)
 なるほど確かに、幼い排泄孔を襲う排泄衝動はいつ果てるとも無く明楽を蹂躙し続ける。教諭の話も上の空で、明楽はいつ果てるともない恥態を繰り広げていた。
「っ、ふ……ぁ」
 腹奥に猛烈な便意を飲み込んで、明楽はぎゅっと堪えていた息を吐いた。ごりゅるるぅっ、とガスが逆流する不快感に耐えきれず、身体を弛緩させる。
「ねえ、あなた?」
 不意に聞き覚えのある声がして、明楽は俯いていた顔を持ち上げる。
 そこには、入学式で明楽の隣に座っていたポニーテールの少女の姿があった。
「……えっ」
 いきなり話しかけられて、明楽は呆然と間の抜けた声をあげてしまう。
 まさか、彼女に自分の惨状を知られてしまったのでは――そう考えた明楽の背筋が冷たくなる。
 ポニーテールの女生徒は、吊り目気味の視線をさらに険しくし、怪訝なものでも見るように明楽を睨む。
「どうしたの? さっきから――具合でも悪いの?」
 まるで、そんなに辛いのにどうして自分でなにもできないのかと、そう蔑むような言葉。
 瞬間。

 ぐりゅっ、ごぼごぼぼっごきゅるるるぅううううっ!!

(あ、ぁうぁあっ!?)
 不意の緊張を強いられた自律神経に反応し、明楽の下腹部で激しい蠕動がたて続けに巻き起こる。うねる腸壁が一度は奥に押し戻された中身をこね回し、少女の排泄孔目掛けて再度押し寄せた。
 あまりにも早い第二派の到来緊急警報に、油断し無防備なところを晒していた明楽の下腹部はあっという間に占領されてしまう。ぼこぼことうねる濃密なガスの塊が熱い衝撃となって直腸で煮え滾る。
 急激な蠕動運動に腹腔が大きくよじれ、猛烈な便意が明楽の排泄器官に襲いかかった。

 ぐごっ、ごきゅるるるるぅぅっ!!

「ぁうぅう……っ!?」
 耐えきれないほどの下腹のうねりに身体を大きく曲げて、腹を押さ込んでしまう明楽。ポニーテールの少女が眉を潜める。
「ねえ、ちょっと?」
「っ、う……うぐっ、うっ、っ!!」
 気付かれぬように。不審がられぬように。それだけを考え、必死に言葉を継いでゆく。
(ダ…ッ、ダメ、ダメダメぇ……っ!! 出ちゃダメっ、ガマン、がマンんっ、ガまンんんん…〜〜ッッ!!)
 腹の中でダイナマイトが爆発したような心境だった。しかし、まさか春菜の目の前で脚をモジつかせたりおしりを押さえることができようはずもなく、明楽は渾身の力を込めて排泄孔を締め付ける。
 それでもわずかずつ漏れ出す汚辱のガスは、小刻みに震える少女のスカートの中に茶色の芳香を漂わせてゆく。
 そして、にち、にち、と押し出される硬く押し固められた焦げ茶色の塊が、明楽の小さなすぼまりを無理矢理こじ開けてゆく。灼熱の感触と共に拡張される排泄孔に、明楽は小刻みに震えながら声にならない悲鳴を上げる。
「っ……〜〜ッッ、んッッ……っ!!」
「ねえ、ちょっと、どうしたの? やっぱり具合悪いの? そうなら早く保健室に――」
 机を握り締め、前傾姿勢になったまま動けなくなってしまった明楽。もはや猛烈な便意のなすがまま蹂躙させるしか道は残されていない。

 ごりゅ、ごぽぽっ。

「あ、あっ」
 耐え切れず、明楽の恥ずかしいすぼまりがぷすっとガスを吐き出す。
(あ、くぅぅぅ……っ!?)

 ぶっ、ぷ、ぷっ、ぷぅっ、ぷぅうっ……ぷぴっ、ぷすっ……

 滑稽にすら聞こえる断続的な放屁。蠕動する直腸のうねりがそのままお尻の出口へと繋がり、明楽は少しずつおならを漏らし続ける。そのわずかな放屁でさえ、周囲にははっきりと悟られてもおかしくないほどの悪臭を生んでいた。
 一週間……まだ小学生だった時から少女の腹腔に溜め込まれ、腐敗し続けたガスはまるでおさまることを知らない。
 いまやおそらく明楽の下着は言い訳のできないほど汚れているだろう。
 少女の意思を無視して、朝から続く下腹部のうねりは腹腔を余すところなく侵し、無慈悲に蹂躙を繰り返していた。繰り返される蠕動にはまだ消化作用を終えていない内容物も追加され、ごぼごぼと腐った泥のような濁流も身体の奥で渦巻いている。
 少女の直腸がこねあげた塊は、明楽の必死の我慢すら突き破り清純を汚そうと暴れつづける。
(っ、おなかイタイ……やだよぅ……っ、やだよぉ……)

 きゅるるるるるっ、ぐきゅううぅう……

 まるでそこに別の生命が息づくかのように、明楽の下腹部が蠢く。少女の消化器官の終点に向けて排泄物がのたうちながら降り下ってゆく。
 腹圧が高まり、内容物を押し出そうと蠕動を繰り返す。
 思わず足を止めてしまいながら、ごぼごぼと蠢く便意を堪え、明楽はスカートの上からさりげなく下着を掴んだ。
 ぎりぎりのところで踏みとどまろうとした明楽の我慢は――
「ちょっと、ねえっ!! トイレ? だったら早く行ってきなさいってばっ」
 小声で囁かれた苛立ちの混じる声に、限界を迎えた。
「っっ――――!?」
 薄い下着一枚に守られた少女の可憐な下腹部の奥底で、内容物を吐き出そうと肉の管が暴れ回る。 
 うんちを、がまんする。
 いまや明楽の意識は、たったそれだけのために存在しているといっても過言ではなかった。恥も外聞もなくおしりを押さえ、最悪の事態だけを必死に先延ばしにしている。
 長時間の我慢を強いられた少女の括約筋は焼きついたように熱を持ち、盛り上がった排泄孔はほんのりと薄紅色に変わっている。猛烈な便意に蹂躙された少女の幼い孔は、じくじくと痺れて甘いむず痒さを伝播させる。断続的に巻き起こる排泄衝動は意志を無視して消化器官を支配し、生命活動の残り滓を小さな孔から絞りだそうと蠕動を繰り返す。
 そして、
「――先生、植野さんがトイレです!!」
 ポニーテールの少女が、教室にはっきりと聞こえるような大きな声でそう叫んだ。


 (続く)
 

2010/04/01 我慢長編