under the rose Entry 157

明楽の入学式・10

 一度汚辱を吐き出した排泄孔は、もはやか細い力しか残ってはおらず、焼け付いたようにひくひくと蠢くばかり。ごつごつと硬く熱い塊が下着をずっしりと引っ張っている。それでも、明楽は残りわずかな力を振り絞って、階段を這うように降りていった。
 そもそも、オモラシの前にトイレに駆け込むことはすでに不可能だ。
 パンツの中にはずっしりと不快な重みがつまり、一歩動くたびにぐちゃぐちゃと言葉にするのもおぞましいほどの汚辱が股間に広がってゆく。揺るがしようのないうんちのオモラシの事実は、明楽の心をずたずたに引き裂いていた。
 だが――なおも激しい濁流が、少女の腹奥で依然猛烈に渦巻いている。これまでの排泄などただの序章と言わんばかりの、激烈な苦痛と排泄衝動が、なおも明楽を責め続けていた。
(あ、あと、半分っ……)
 手摺りに寄りかかるような格好で慎重に最後の一段を降り、明楽は2階への階段の途中、踊り場に到着した。待望の目的地――トイレはあともう半分、階段を降りきったところにある。
 だが、今の明楽にはほんの数10mの距離が無限にも感じられた。おなかの中を荒れ狂う嵐は全く収まることなく、排泄孔はぷぴっ、ぶちゅるっ、と断続的に粘液を吐き出している。
 それでもわずかな希望、おなかの中で荒れ狂う中身を出せる場所を求めて、明楽は前に進むしかないのだ。

 ぶぷっ、ぷすっ、ぷちゅっ、ぷっ、ぷ、ぷぅぅうっ!!

(やだぁ……もう出ないでぇっ……お願い、だからぁ……っ)
 泣きべそをかきながら粘つく音のオナラを撒き散らしながら、限界ギリギリの爆発危険物となったおしりを押さえ、明楽はよろめいた身体を支える。スカート越しにもはっきりとわかるほど、熱く重い感触が伝わる。自分のひり出した塊のおぞましさに明楽は低くしゃくりあげる。

 ごきゅ、ぐりゅるるっ……ごりゅ、ぐきゅるぅぅうぅ……

「は、ぐぅぅうう…っ」
(と、トイレ、おトイレっ……はやく、う、うんち、トイレ、おトイレぇ……!!)
 最後の一線で、明楽は真っ赤になって歯を食いしばり、耐え続けた。トイレまで辿り着けば、もう我慢しなくてもいいのだ。おなかの中で荒れ狂う塊を、心行くまでぶちまけることができる。
 それさえできれば、もう何でもよかった。明日からの学校生活も、憧れの制服も、もう明楽の思考には残っていない。
 最後の最後に気力を振り絞って、絶望の淵にしがみ付き、ずっしりと重いパンツを抱えながらも、明楽は全身全霊を賭して凶悪なまでの便意を堪え続けていた。
 留まるところを知らず猛烈に暴れ回る排泄衝動に対し、酷使された肉体は既に限界を迎えており、ひしゃげた排泄孔はひっきりなしに粘つく爆音を奏で続けている。

 ぶびっ、ぶちゅ、ぶびぃいいいーーーっ!!

「あぐ……っ……ぅぁ…ッ!!」
 両手でおしりを押さえ、オナラを漏らしながら、次のトイレ――排泄場所を求めて邁進する。それはまるで、体内で発生したガスを推進力に歩いているような惨めで滑稽極まりない姿だった。
「ぁ、あ、ぉ、ぅ、ぃ、いっ、」
 文字通り、身も心も強烈な排泄衝動に蹂躙された哀れな少女の唇からは意味の通らない呻きがこぼれ、食いしばった口元から堪えきれない唾液が溢れる。腸内を荒れ狂う腐った汚泥のせいで、明楽は意味のある思考もできずにいた。

 ぶす、ぶ、ぶうぅっ!!
 ぶぷっ!! ぶぉぼびびっ、ばぶっ!!

 踊り場の手すりに寄りかかった明楽のスカートの下で、腸液にぬめる排泄孔がめくれ上がり、ひしゃげてねじれ、下品な音を立て続けに爆発させる。
「ぁ、あ、っ、で、出ないで、でちゃ、ダメぇ……っ!!」
 既に、何度となく膨大な量のガスと、両手に余るほどの固形便の通過を許した明楽の排泄孔はすっかり粘膜を裏返らせて拡がってしまい、再度の排泄のための準備を着々と整えつつあった。丸いドーナツ状に収縮した排泄孔は、明楽の意志に反してガスを吐き出す。静まり返った階段には次々と少女のものとは思えないほど下品極まりない放屁音が鳴り響く。
 普段なら控えめな明楽に相応しい、色素の沈着もほとんどない楚々とした可憐なすぼまりは、汚れた粘液にまみれながらくちりと内臓の肉色をそとにはみ出させ、ぱくぱくと口を開いている。
 いまや明楽のおしりの孔は、ところ構わず悪臭を撒き散らす下劣な肉の管と成り果てていた。
「ふ、はぁ…っく、ふぅっ……」
 わずかな深呼吸にも過敏に反応し、明楽の内臓は排泄器官に刺激を伝播する。耐えに耐え続けた便意は濃縮され、毒と化した内容物が腹奥でびくびくとうねる。その様は、もはや別個の生命が宿っていると評しても支障の無いレベルだ。

 ごきゅ、ぐりゅっ、ごぼぼりゅっ!!
 ぶ、ぶちゅるっ……ぶばっ!!

 そして、そこが吐き出すのはただのガスだけに留まらない。排泄孔はまるで別の生命体のように激しく蠢き、少女のおなかの内側にに閉じ込められたごつごつと固まる中身を吐き出さんとしていた。腸音はおさまることなく、明楽のうんちの孔は体内からの圧力に屈しそうに盛り上がっては中身を覗かせている。
 必死になっておしりの孔に神経を集中し、最悪の事態だけは回避しようとする明楽だが、酷使され続けた括約筋はすっかり疲弊していた。
「うぁ……くうっ……ふぅっ」
 明楽の苦しげな吐息と共に、排泄孔がきゅうと絞り上げられる。しかし、少女が渾身の力を込めて元の形を取り戻しても、すぼまりはすぐに盛り上がり、ピンク色の粘膜部分を覗かせた。
(も、もれちゃぅ……でっ、で、ちゃうっ、またでちゃうっ、……ぅううううぅう〜〜っ!!!)
 分泌された腸液にぬめる肉の管。排泄孔のすぐ真上まで、びちびちにうねる褐色の粘塊がやってきている。一週間もの間閉じ込められたため、完全に腐敗して悪臭と汚辱の塊となったモノが、はちきれそうに詰まっている。文字通りの“腸詰め”状態だ。少女の小さな排泄器官を蹂躙せんとばかりに激しく蠕動する直腸は、中に詰まった異物を排除しようと柔毛を波打たせ、腹音を唸らせて排泄を急かす。
「ぁ、あっあ、あーーっ!!!」

 ぶりゅぅうっ!! ぶちゅ、びちびちびびちゅっ!!

 灼熱の塊が下着に激突する。体内で捏ね上げられた塊が狭い布地をさらに盛り上げ、ごつごつとした感触の間にぬめる粘塊を満たしてゆく。もわっとこみ上げた臭気が撒き散らされ、明楽の脚を茶色の粘液が滴り始めていた。
(だ、め、だめ、だめ……っ)
 渾身の力で引き絞られる括約筋。しかし長時間の酷使の末に疲弊したそこは、もはや少女の意志を無視して口を開こうとしていた。
 それに加勢するかのように、本来排泄とは無関係の胃袋と小腸までもが蠢いて、明楽に排泄を要求していた。
 長い間本来の役割を忘れていた少女の排泄器官は、そのブランクを取り戻すかのように活動を活性化させ、おなかの中身を絞り出そうとしている。

 ぐるぐるっ、ぐりゅるぐるるぐるぐるぐるぅっ!!

(ゃだ……でないでぇっ、……っ、うんちでるっ、でるうんちでるっ、でるぅう!!)
 かつては便秘という形でオモラシを防ぐために味方をしてくれた、直腸入り口付近の硬質便は、いまや明楽のパンツの中にずっしりと詰まったままだ。怒涛のように流れ出そうとする後続の排泄物を押さえるものは何もなく、身体の機能までもが明楽を裏切っていた。
 かすかに残された少女としてのプライドのみが、疲弊し磨耗した括約筋を引き絞り、まるで意志を持ったかのように暴れ回る排泄物をどうにか腸内に閉じこめている。少女の両手は緊張と焦燥に、知らずスカートの上からぐちゃぐちゃとパンツの中をかき回し、お尻はおろか股間までをも汚らしい茶色に染めてゆく。
 それでも激しい腹腔のうねりは天井知らずに高まり続けていた。 
「は……はぁっ、は、ぅ……、ふぅっ……うぅぅっ……」
(だ、ダメ、出ちゃう、うんち、っ、と、トイレ、トイレっ、お、とイレ、トイれぇえ……だめ、でちゃう、おうちまでがまんできないっ、トイレ、うんちといれうんちでるといれうんちうんちうんちでちゃうでるでるでるぅうっ……!!)
 不恰好におしりを押さえ、くねくねと身体を揺すり、ねじり、もじもじと脚を動かして、明楽はがくがくと震える膝を引きずって、階段を降りはじめた。苛烈な生理現象に思考を退化させた明楽の脳裏には、最も慣れ親しんだ白く清潔なトイレの便器が閃光のように焼き付いていた。
 トイレまで我慢――
 それは、今の明楽にとってあまりにも絶望的な、15段、30mという距離。
(は、はやくっ、トイレ、おトイレっ、も、もれちゃ……ダメ、ダメえっ)
 永遠にも等しい道のりを前に、明楽はまだ見ぬトイレを渇望する。
 しかし脚が言うことを聞かない。がくがくと痙攣をはじめ、動かなくなった膝が自然に折れ曲がり、いつしか明楽のブラウスの背中をびっしょりと汗が濡らしていた。



 何度も何度も猛烈な波を乗り越え、排泄孔を渾身の力で引き絞り、それでもなおぶぢゅぶぢゅと汚らしい音をパンツの中に吐き出して。途方も無い旅路の果て、明楽がどうにか辿り着いた一階のトイレは、奇跡的に無人だった。
(や、やっと、やっとウンチできるっ……)
 明楽にとって、至福、幸せの絶頂の瞬間であった。渇望し続けたトイレ、うんちのできる場所まで、なんとか被害を最小限にして辿り着いたのだ。既に重く盛り上がったパンツの中にはずっしりと排泄してしまった焦げ茶の塊が詰まっているが、それでもなお――明楽の腹は激しくぐるぐると唸りを上げ続け、体内に溜まったモノを残らず絞り出そうとうねり続けている。
 狭いトイレの中、二つだけの個室のうち、片方には小さく『故障中』の張り紙があった。
 だが、少なくとももうひとつは健在だ。開きっぱなしのドアの奥では、見慣れた白いフォルムの洋式便器が、明楽をそっと出迎えてくれていた。

 ウンチのできる場所。
 ウンチをしても良い場所。

 待望の個室、白く口を開けた様式便器を前に、明楽は壁に手をついて寄り掛かりながら、慎重に一歩ずつ進んでゆく。わずかな均衡が破られれば、途端に大惨事が引き起こされてしまう。これ以上のオモラシをパンツが受け止めきれるわけもなく、吹き出した濁流はそのまま足元に飛び散ってしまうに違いない。それだけは、それだけはなんとしても避けなければいけなかった。
 少女の身体はすでにはしたなく待ちかねた排泄への歓びにうち震え、ぐるぐると猛烈な排泄反応をはじめている。
(といれ、トイレトイレ、おトイレ…うんちでちゃう、うんちでるっ…うんち出せる…っ!!)
 既に恥じらいを失いつつある明楽の心は、ようやく訪れた排泄の機会に歓喜を奏でる。もう我慢しなくてもいい。そう考えるだけでぞっとするほどの解放感が少女を包み込む。
 しかし、同時にその安心感は、明楽の排泄器官に油断をもたらしていた。

 ぶびっ、ぶびぃいーーーっ!!!

 ごぼりっ、と腹奥で不快な感触が湧き上がったかと思った瞬間、明楽の排泄孔がびちびちと激しい音を立てた。教室の広い空間ではなく、トイレという限られたスペースに散布された悪臭は先程の比ではない。個室を前にしてさらに活性化した明楽の排泄器官は、ほとんど本当の排泄と同じような状態で濃縮されたガスを吐き出していた。

 ごきゅるるるるるるぅっ!! ごろっ、ごぼっ!!

「――ぁあはぁああっ!!」
(っ、だ、だいじょうぶ、まだ出てないっ、お、オナラしちゃっただけ……っ)
 咄嗟に押さえたスカートのお尻、下着の中にぶつけられたガスの塊が、下着にへばりついた粘液をぶじゅぶじゅと攪拌する。もはやオモラシという事実は確定でありながら、明楽は被害の拡大を押さえ込むため、便意の二次災害を必死に腹奥にねじ込んでゆく。
 そんなささいな感傷は許さぬとばかり、下腹部のうねりがひときわ大きく似え滾る。灼熱の塊が、明楽のおしりを覆う下着のすぐ下でのたうつ。
 どうしようもない生理現象の猛威。荒れ狂う衝動に突き動かされ、泣きべそをかきながらも、明楽は個室のドアへとよたつきながら入っていった。

 ――しかし。



 (続く)
 

2010/04/01 我慢長編