明楽の入学式・9
明楽の意識が真っ白に塗りつぶされる。それだけは、絶対に知られてはいけなかったのに。
「なんだ、さっき言わなかったじゃないか……まあいい、早く言って来い」
「っ……ち、違……」
明楽は必死に否定しようとしていた。しかし、トイレという単語に少女の下腹部は過敏なほどに反応してしまう。反射的に腰を浮かせかけた明楽の双丘の隙間で、ぷくぅ、と排泄孔が盛り上がる。
ぐきゅぅぅっっ、ぎゅるごぶっ、ごぼぼぼっ、ぶぷっ!!
「ぁああうぅぅううぅぅぅうううぅうぅっ!?」
汚らしく澱んだ濁流が下水に流れこむかのごとき下品な音を立て、明楽の下腹部が激しくうねった。排泄器官と一体化した腸内の蠕動は、ダイレクトに明楽のおしりの孔を直撃し、土石流のように渦巻く便意を爆発させる。
辛うじてその役目を果たしていた括約筋が弛緩し、おしりの間に張りついていた下着のなかにぷぢゅ、ぷびゅるっと粘液混じりのガスを吐き出す。
(で、でちゃう、でちゃうだめでちゃううんちでちゃうぅうぅうっ!?)
激しく蠕動を繰り返す直腸は、分泌された腸液を混ぜ合わせ、固まった内容物を捏ね上げてゆく。ぼくん、と脈動する下腹部はまるで神聖な出産の時のように激しく蠢いている。だが、少女の体内にあるものは命の芽生えでも何でもない。ただの食物の残り滓でしかない。
「ちょっとぉ、マジで? さっきのもあの子?」
「ねえ、あの子そうよね? 入学式ですっごい臭いオナラしてたの、あの子じゃない?」
「うっそぉ、まだ我慢してたの? ……あれって、大きい方だよね?」
ひそひそと囁き交わされるクラスメイトの非難。隠そうともしない少女たちの囁きを、明楽の耳ははっきりと捕らえてしまう。
「ひょっとしてもう漏らしちゃってんじゃないの?」
「まさかぁ……いくらなんでも、この歳になってそれありえないって」
「でも、ほら……」
明楽は耐え切れなくなってぎゅっとおなかを押さえた姿勢のまま動けなくなってしまう。そんな明楽に追い討ちをかけんばかりに、腸が不気味に蠕動し、明楽に排泄を訴える。
ぎゅるぎゅるるるっ、ぐぎゅうううううっ……!!
「だめ、ぇええええ……っ!!!」
(こんなところでウンチなんか、だめ、っ、だめえええっ!!)
びくん、と伸びた明楽の太腿に緊張が走る。伸ばした指で恥も外聞もなく排泄孔を押さえ、震える膝と腰は、すでに獰猛な排泄欲をなだめることすら満足にしてくれない。
喉がカラカラだった。明楽の排泄孔は一秒間に何度も盛り上がり、その中身をぶちまけようと伸縮を繰り返す。辛うじて決壊を先延ばしにできていることも奇跡に近かった。
「ぁあうああああっ!?」
猛烈な便意が下腹部で爆発する。同時に疲弊した括約筋が惨めにひしゃげた音を立て、腸液に粘つく放屁音を連発させた。
ぶっ、ぶすっ、ぶちゅっぷぷっ、ぷぅうーーーーっ!!
「っ!!!」
音程はずれのトランペットを思わせる、間抜けなほどの放屁音が、教室に響く。
教室に一斉に警戒が走った。
「や………ち、違うのっ、その、違うの!! わ、私っ、わたしっ……!!」
とっさにおしりを押さえ込む明楽だが、構わずガスは漏出を続け、辺りにはむせ返るほどの汚臭が撒き散らされてしまう。耐え切れなくなったクラスメイトが机を揺らして席を離れ、距離をとる。
「ぃ、ぃやぁああああっ……」
絞り出すような悲鳴を上げ、明楽は机に突っ伏した。
(で、……出ちゃった……す、すごく臭いの……いっぱいっ……)
この世界でこれ以上はないというくらいの、汚らしく穢らわしい毒ガス。それは明楽が自分の身体の中で作り出したものだ。自分の不始末が、言い訳の聞かない自分の身体がひり出した最悪の汚染物質だ。
どこか他人事のような認識は明楽がその事実を認めたくなかったからに他ならない。思わず二の足を踏みたくなる程の悪臭、明楽のおなかの中の凄惨な状況をありありと知らせる腐臭の最前線で、ポニーテールの少女がはっきりと不快な表情を浮かべ、顔を背ける。
「や……ぁ……ち、ちがうの、こんな、ちがうのぉ……」
堪えようもない程の恥辱。明楽は舌を噛み切りたいほどの羞恥に、俯いて泣きだしてしまう。
しかし、明楽を襲う悲劇はそれだけにはとどまらなかった。
うねる下腹部はさらに立て続けに爆発し、極限の均衡が乱された。
――ぐる、ぎゅるっ、ごぼっ!!
S字結腸の収縮と共に、腹奥に押し込められていた便塊が一気に押し出された。すでにまったく余裕の残されていない直腸が、強制的にねじ込まれる焦茶色の塊に占領される。
(―――ぁ、あ、あ、あっ、あーっっ!!)
明楽の思考が、汚らしい汚辱の土褐色に染まる。
生理現象と排泄の摂理にともなって、びくりと裏返った排泄孔がスカートの下で粘つく音を立てた。
ぶちゅ、ぶびっ、ぶぶぶっ!!
「ぁあああ、ぁ、ぁっ、あ、ぁっ!!」
(で、っ……でちゃ、っ!!)
盛り上がった排泄粘膜を震わせる激しいガスの放出音に続いて、圧倒的な灼熱感が明楽の下の穴をこじ開けてゆく。酷使された括約筋をして感じ取れる、途方もなく太く大きな固形の感触。
ぎちぎちと、排泄孔を丸く押し広げ、ドーナツ状の括約筋を限界まで拡張する黒々とした塊。消化の果てに水分を限界まで吸収され、粒子状になって固まった硬くごつごつとした焦げ茶色の塊が、少女のおしりの孔のすぐそこまで降りてきた。
みちゅっ、ぷぷ、ぷぷぷすっ、ぷすすぅっ……
小さなガスの放出を繰り返しながら、激しい運動に反応し、腹腔が活性化する。盛り上がりを繰り返した明楽の排泄孔が、ついにぱくりと口を開いた。
その奥から腸液に塗れた硬い内容物が、湯気とともに頭を覗かせる。
(だ、だめっ、出ちゃダメえッ!!!)
明楽はなりふり構わず、指先で顔を覗かせたうんちの頭を押さえ込んだ。
思い余った明楽は、下着の上から、直接、吐き出されようとしている汚辱の塊を無理矢理おしりの中に押し戻そうとしたのだ。
(こんなところで、ぜっっったいに、だめえぇっ……)
漏らすまいというただ一心で、明楽は排泄という大自然の理すら否定しようとしていた。
かちかちに固まった便塊が、明楽の手と下腹部の蠕動に挟まれてぐちゃりと潰れ、下着の中で捲れ上がった排泄孔が小さなおならを繰り返す。明楽の腹の中には七日にも及ぶ便秘の産物がぎっしりと蠢いており、排泄器官はその全ての内容物を吐きだそうと蠕動を続けているのだ。
「や、やぁ……だめ、だめぇええ!!!」
ぬぬぬ…にち、ぬちぬち、にちにちちちっ、ぬちゅっ……
排泄衝動に突き上げられ、白く柔らかな排泄孔が、粘液の助けを借りて大きく拡張されながら、ぬちぬちと音を立てて硬い塊を絞り出してゆく。身動きできない少女の白いお尻を引き裂くように固形の便塊が次々と顔を出し、パンツの中へと吐き出されてゆく。
お尻を包む布地をべっとりと汚して、重く沈む熱い塊の感触に、明楽は悲鳴を上げた。
「ぁあっ、はっ、だめ、ダメぇ、だめえっ、だめえええええっ!!」
(う、うんち……でちゃった……オモラシ……やだっ、もう、オトナなのにっ……)
もはや明楽は一人の少女というよりも、うんちを我慢するためのひとつの機械だった。もじもじとくっつけられた脚も、おなかとおしりをきつく押さえる手も、全て望まない排泄を耐えるために動いている。その機能も酷使され疲弊し消耗し、完全には機能をしていない。
「はぐっ……うぅう……」
のたうつ下腹部を抑制し、激しく腰を使いながら便意に抵抗する明楽。
びくびくと跳ねる腰は前後左右に動き、少しでも迫り来る便意を押さえようともがく。
担任の教諭も、クラスメイトも、誰もが言葉を失って遠巻きに明楽を見ていた。まさか本当に、教室の真ん中でうんちを始める生徒が居るなんて想像もしていなかったのだろう。
「っ、いいから、我慢できないなら早くトイレ行きなさいっ!!」
口元を手で覆いながら、明楽の傍にただ一人残ったポニーテールの少女が叫ぶ。
明楽は耳を塞ぎ暴れだしたくなっていた。無論、下り続ける腹がそれを許すわけがない。まるで張りついたようにお腹とおしりに伸ばされた手は動かない。
「ぁ……ぁ」
「お腹、壊してるんでしょ!? はやくトイレ行ってきなさいっ!!」
ぼうっと霞む頭の中で、明楽はぶんぶんと首を振った。
「で、っ……だめ、違うの…」
「何が違うのよ!! もう漏らしてんじゃない!! なんで早くトイレ行かないの!? 早くっ!!」
(ち、違うの、ちゃんと……行こうとしたのっ、うんち、ちゃんと、トイレまで、ガマンっ……っあ、あうぅうあうっ!?)
ぬちゅぶちゅ、ぶっ、ぶぴっ、ぷぅ、ぷすっ、ぷっ……
ぶっ、ぶびゅ、ぶりゅぶびぶちゅぶぶぶぅっ!!! みちゅみちちちちぃ…ッ!!
排泄孔を大きく押し広げ、さらなる排出の第2派が進軍する。下着の上からでもはっきりと解るほどのごつごつとした感触は、紛れもない明楽自身が溜めこんだ食物の残り滓。
すさまじい悪臭を撒き散らしながら。明楽は両手をスカートの上からお尻に押し当て、排出されたばかりの塊を伸びきった排泄孔の中に無理矢理押し戻そうとする。
しかし、腹腔がうねり引き絞られ、暴力的なまでの便意を伴って吐き出される塊を押し戻すことはかなわない。すっかり裏返って内臓の肉色を覗かせた排泄器官は、一週間と言うモラトリアムを許していた排泄物を残らず絞り出さんとのたうった。
「はぐっ……っ!!」
白く柔らかな布地を汚染し、ヒリ出された巨大な便塊は大蛇のように折れ曲がり、重なり、ずしりとトグロを巻き、明楽の下着を膨らませてゆく。焦げ茶に染まった下着の中心部が大きく盛り上がり、そこからぷすぷすとガスを伴った汚辱の塊がはみ出した。
分泌された直腸粘液がぴゅるっと吹き出し、下着の隙間から脚を伝い落ちる。
途方もない悪臭が広がり、スカートを黒々と染める明楽のオモラシに、一斉に生徒たちが悲鳴を上げた。
「ぅ、う、あ……」
沈黙の支配した教室の中、明楽はのろのろと中腰のまま、席を立った。
ぶちゅ、ぶちゅ、と汚らしい音を立てる下半身を抱えながら、亀のような歩みで教室を横切ってゆく。明楽の行く手を避けるようにクラスメイトの人垣が割れ、明楽は死ぬよりも辛い恥辱の中、教室のドアに辿り着いた。
「ひぐっ!!」
ぶぶ、ぶびっ、ぶりゅぶちゅぼっ!!
途端、捻り上げるような腹部の蠕動とともに明楽の排泄孔を強烈な便意が貫いた。お尻を押さえたままびくっと背中を伸ばし、直立不動となった明楽は、歯を食いしばって第3派の排泄を堪える。
「っは、はーっ、はぁあーっ、はぐうぅう……っ」
口元は開いたまま、よだれが唇から零れ落ちる。蹂躙され続けた下腹部は取り返しのつかないほどに汚れ、悪臭にまみれ、少女の一番大事な部分まで侵食をはじめている。
前屈みのまま排泄音を響かせる明楽を遠巻きに見ながら、クラスメイトたちが囁きあう。
「ちょ、ちょっと、ねえ、誰かトイレ連れてってあげなよ……あれ、絶対間に合わないってば……」
「や、やぁよ!! あんた行けばいいじゃない。途中で漏らされちゃったらどうすんの?」
「私だってイヤだってば!! オモラシの後始末なんてなんで手伝わなきゃ…・・・」
(もうやだ、もうやめてよぉ……っ、ごめんなさい、ごめんな、さいっ、……謝りますから……ちゃんと、トイレ行けなくてっ、ごめんなさいっ……)
心無いクラスメイトたちの言葉に、明楽のプライドはずたずたに引き裂かれていた。
新しい学校、新しい生活、その基点になるはずのに晴れの入学式の、その当日に――惨めにも我慢できずうんちを漏らし、ひり出した排泄物にパンツをずっしりと重くしてしまう――
まして、これから1年を共に過ごすはずのクラスメイトのみんなに鼻が曲がるほどの猛烈な悪臭を何度も何度も浴びせ掛け、それですら飽き足らずとうとう中身まで漏らしてしまった。
(き、嫌われちゃう……こんなことする女の子なんか……絶交されちゃう……よぅ……)
今すぐ、この場で死んでしまいたいと思うほどの激しい後悔と恥辱。クラス中に、いや、学校中にうんちを漏らしたことを知られて、明日からどうやって生きていけばいいのだろう。それすらももう解らない。
「さあ、早くッ!! トイレ、階段の隣にあるから!!」
走ってきたポニーテールの少女が顔を背けつつドアを開けてくれる。明楽はもうお尻から手を離すこともできなかった。歩くだけでパンツの中にうずたかくトグロを巻いて詰まったウンチが溢れてしまいそうで、それを抑えるのに精一杯なのだ。押さえ込んだスカートの下で、ぐちゅぐちゅと想像したくない汚辱に満ちた音が響く。
ごきゅるるるりゅっ、ぐぼっぼっ、ぶぷっ!!
拷問のような腹音はいまだ衰えることなくうねっている。さらに吐き出されるであろう恥辱の粘土細工が、張り詰めた直腸にみちみちと詰まっている。
背中にはクラスメイト達の明らかな蔑視の視線。何度も襲い来る発作を辛うじて耐え、明楽はがくがくと震える脚を引きずり、おしりを押さえながら教室を飛び出した。
(続く)
「なんだ、さっき言わなかったじゃないか……まあいい、早く言って来い」
「っ……ち、違……」
明楽は必死に否定しようとしていた。しかし、トイレという単語に少女の下腹部は過敏なほどに反応してしまう。反射的に腰を浮かせかけた明楽の双丘の隙間で、ぷくぅ、と排泄孔が盛り上がる。
ぐきゅぅぅっっ、ぎゅるごぶっ、ごぼぼぼっ、ぶぷっ!!
「ぁああうぅぅううぅぅぅうううぅうぅっ!?」
汚らしく澱んだ濁流が下水に流れこむかのごとき下品な音を立て、明楽の下腹部が激しくうねった。排泄器官と一体化した腸内の蠕動は、ダイレクトに明楽のおしりの孔を直撃し、土石流のように渦巻く便意を爆発させる。
辛うじてその役目を果たしていた括約筋が弛緩し、おしりの間に張りついていた下着のなかにぷぢゅ、ぷびゅるっと粘液混じりのガスを吐き出す。
(で、でちゃう、でちゃうだめでちゃううんちでちゃうぅうぅうっ!?)
激しく蠕動を繰り返す直腸は、分泌された腸液を混ぜ合わせ、固まった内容物を捏ね上げてゆく。ぼくん、と脈動する下腹部はまるで神聖な出産の時のように激しく蠢いている。だが、少女の体内にあるものは命の芽生えでも何でもない。ただの食物の残り滓でしかない。
「ちょっとぉ、マジで? さっきのもあの子?」
「ねえ、あの子そうよね? 入学式ですっごい臭いオナラしてたの、あの子じゃない?」
「うっそぉ、まだ我慢してたの? ……あれって、大きい方だよね?」
ひそひそと囁き交わされるクラスメイトの非難。隠そうともしない少女たちの囁きを、明楽の耳ははっきりと捕らえてしまう。
「ひょっとしてもう漏らしちゃってんじゃないの?」
「まさかぁ……いくらなんでも、この歳になってそれありえないって」
「でも、ほら……」
明楽は耐え切れなくなってぎゅっとおなかを押さえた姿勢のまま動けなくなってしまう。そんな明楽に追い討ちをかけんばかりに、腸が不気味に蠕動し、明楽に排泄を訴える。
ぎゅるぎゅるるるっ、ぐぎゅうううううっ……!!
「だめ、ぇええええ……っ!!!」
(こんなところでウンチなんか、だめ、っ、だめえええっ!!)
びくん、と伸びた明楽の太腿に緊張が走る。伸ばした指で恥も外聞もなく排泄孔を押さえ、震える膝と腰は、すでに獰猛な排泄欲をなだめることすら満足にしてくれない。
喉がカラカラだった。明楽の排泄孔は一秒間に何度も盛り上がり、その中身をぶちまけようと伸縮を繰り返す。辛うじて決壊を先延ばしにできていることも奇跡に近かった。
「ぁあうああああっ!?」
猛烈な便意が下腹部で爆発する。同時に疲弊した括約筋が惨めにひしゃげた音を立て、腸液に粘つく放屁音を連発させた。
ぶっ、ぶすっ、ぶちゅっぷぷっ、ぷぅうーーーーっ!!
「っ!!!」
音程はずれのトランペットを思わせる、間抜けなほどの放屁音が、教室に響く。
教室に一斉に警戒が走った。
「や………ち、違うのっ、その、違うの!! わ、私っ、わたしっ……!!」
とっさにおしりを押さえ込む明楽だが、構わずガスは漏出を続け、辺りにはむせ返るほどの汚臭が撒き散らされてしまう。耐え切れなくなったクラスメイトが机を揺らして席を離れ、距離をとる。
「ぃ、ぃやぁああああっ……」
絞り出すような悲鳴を上げ、明楽は机に突っ伏した。
(で、……出ちゃった……す、すごく臭いの……いっぱいっ……)
この世界でこれ以上はないというくらいの、汚らしく穢らわしい毒ガス。それは明楽が自分の身体の中で作り出したものだ。自分の不始末が、言い訳の聞かない自分の身体がひり出した最悪の汚染物質だ。
どこか他人事のような認識は明楽がその事実を認めたくなかったからに他ならない。思わず二の足を踏みたくなる程の悪臭、明楽のおなかの中の凄惨な状況をありありと知らせる腐臭の最前線で、ポニーテールの少女がはっきりと不快な表情を浮かべ、顔を背ける。
「や……ぁ……ち、ちがうの、こんな、ちがうのぉ……」
堪えようもない程の恥辱。明楽は舌を噛み切りたいほどの羞恥に、俯いて泣きだしてしまう。
しかし、明楽を襲う悲劇はそれだけにはとどまらなかった。
うねる下腹部はさらに立て続けに爆発し、極限の均衡が乱された。
――ぐる、ぎゅるっ、ごぼっ!!
S字結腸の収縮と共に、腹奥に押し込められていた便塊が一気に押し出された。すでにまったく余裕の残されていない直腸が、強制的にねじ込まれる焦茶色の塊に占領される。
(―――ぁ、あ、あ、あっ、あーっっ!!)
明楽の思考が、汚らしい汚辱の土褐色に染まる。
生理現象と排泄の摂理にともなって、びくりと裏返った排泄孔がスカートの下で粘つく音を立てた。
ぶちゅ、ぶびっ、ぶぶぶっ!!
「ぁあああ、ぁ、ぁっ、あ、ぁっ!!」
(で、っ……でちゃ、っ!!)
盛り上がった排泄粘膜を震わせる激しいガスの放出音に続いて、圧倒的な灼熱感が明楽の下の穴をこじ開けてゆく。酷使された括約筋をして感じ取れる、途方もなく太く大きな固形の感触。
ぎちぎちと、排泄孔を丸く押し広げ、ドーナツ状の括約筋を限界まで拡張する黒々とした塊。消化の果てに水分を限界まで吸収され、粒子状になって固まった硬くごつごつとした焦げ茶色の塊が、少女のおしりの孔のすぐそこまで降りてきた。
みちゅっ、ぷぷ、ぷぷぷすっ、ぷすすぅっ……
小さなガスの放出を繰り返しながら、激しい運動に反応し、腹腔が活性化する。盛り上がりを繰り返した明楽の排泄孔が、ついにぱくりと口を開いた。
その奥から腸液に塗れた硬い内容物が、湯気とともに頭を覗かせる。
(だ、だめっ、出ちゃダメえッ!!!)
明楽はなりふり構わず、指先で顔を覗かせたうんちの頭を押さえ込んだ。
思い余った明楽は、下着の上から、直接、吐き出されようとしている汚辱の塊を無理矢理おしりの中に押し戻そうとしたのだ。
(こんなところで、ぜっっったいに、だめえぇっ……)
漏らすまいというただ一心で、明楽は排泄という大自然の理すら否定しようとしていた。
かちかちに固まった便塊が、明楽の手と下腹部の蠕動に挟まれてぐちゃりと潰れ、下着の中で捲れ上がった排泄孔が小さなおならを繰り返す。明楽の腹の中には七日にも及ぶ便秘の産物がぎっしりと蠢いており、排泄器官はその全ての内容物を吐きだそうと蠕動を続けているのだ。
「や、やぁ……だめ、だめぇええ!!!」
ぬぬぬ…にち、ぬちぬち、にちにちちちっ、ぬちゅっ……
排泄衝動に突き上げられ、白く柔らかな排泄孔が、粘液の助けを借りて大きく拡張されながら、ぬちぬちと音を立てて硬い塊を絞り出してゆく。身動きできない少女の白いお尻を引き裂くように固形の便塊が次々と顔を出し、パンツの中へと吐き出されてゆく。
お尻を包む布地をべっとりと汚して、重く沈む熱い塊の感触に、明楽は悲鳴を上げた。
「ぁあっ、はっ、だめ、ダメぇ、だめえっ、だめえええええっ!!」
(う、うんち……でちゃった……オモラシ……やだっ、もう、オトナなのにっ……)
もはや明楽は一人の少女というよりも、うんちを我慢するためのひとつの機械だった。もじもじとくっつけられた脚も、おなかとおしりをきつく押さえる手も、全て望まない排泄を耐えるために動いている。その機能も酷使され疲弊し消耗し、完全には機能をしていない。
「はぐっ……うぅう……」
のたうつ下腹部を抑制し、激しく腰を使いながら便意に抵抗する明楽。
びくびくと跳ねる腰は前後左右に動き、少しでも迫り来る便意を押さえようともがく。
担任の教諭も、クラスメイトも、誰もが言葉を失って遠巻きに明楽を見ていた。まさか本当に、教室の真ん中でうんちを始める生徒が居るなんて想像もしていなかったのだろう。
「っ、いいから、我慢できないなら早くトイレ行きなさいっ!!」
口元を手で覆いながら、明楽の傍にただ一人残ったポニーテールの少女が叫ぶ。
明楽は耳を塞ぎ暴れだしたくなっていた。無論、下り続ける腹がそれを許すわけがない。まるで張りついたようにお腹とおしりに伸ばされた手は動かない。
「ぁ……ぁ」
「お腹、壊してるんでしょ!? はやくトイレ行ってきなさいっ!!」
ぼうっと霞む頭の中で、明楽はぶんぶんと首を振った。
「で、っ……だめ、違うの…」
「何が違うのよ!! もう漏らしてんじゃない!! なんで早くトイレ行かないの!? 早くっ!!」
(ち、違うの、ちゃんと……行こうとしたのっ、うんち、ちゃんと、トイレまで、ガマンっ……っあ、あうぅうあうっ!?)
ぬちゅぶちゅ、ぶっ、ぶぴっ、ぷぅ、ぷすっ、ぷっ……
ぶっ、ぶびゅ、ぶりゅぶびぶちゅぶぶぶぅっ!!! みちゅみちちちちぃ…ッ!!
排泄孔を大きく押し広げ、さらなる排出の第2派が進軍する。下着の上からでもはっきりと解るほどのごつごつとした感触は、紛れもない明楽自身が溜めこんだ食物の残り滓。
すさまじい悪臭を撒き散らしながら。明楽は両手をスカートの上からお尻に押し当て、排出されたばかりの塊を伸びきった排泄孔の中に無理矢理押し戻そうとする。
しかし、腹腔がうねり引き絞られ、暴力的なまでの便意を伴って吐き出される塊を押し戻すことはかなわない。すっかり裏返って内臓の肉色を覗かせた排泄器官は、一週間と言うモラトリアムを許していた排泄物を残らず絞り出さんとのたうった。
「はぐっ……っ!!」
白く柔らかな布地を汚染し、ヒリ出された巨大な便塊は大蛇のように折れ曲がり、重なり、ずしりとトグロを巻き、明楽の下着を膨らませてゆく。焦げ茶に染まった下着の中心部が大きく盛り上がり、そこからぷすぷすとガスを伴った汚辱の塊がはみ出した。
分泌された直腸粘液がぴゅるっと吹き出し、下着の隙間から脚を伝い落ちる。
途方もない悪臭が広がり、スカートを黒々と染める明楽のオモラシに、一斉に生徒たちが悲鳴を上げた。
「ぅ、う、あ……」
沈黙の支配した教室の中、明楽はのろのろと中腰のまま、席を立った。
ぶちゅ、ぶちゅ、と汚らしい音を立てる下半身を抱えながら、亀のような歩みで教室を横切ってゆく。明楽の行く手を避けるようにクラスメイトの人垣が割れ、明楽は死ぬよりも辛い恥辱の中、教室のドアに辿り着いた。
「ひぐっ!!」
ぶぶ、ぶびっ、ぶりゅぶちゅぼっ!!
途端、捻り上げるような腹部の蠕動とともに明楽の排泄孔を強烈な便意が貫いた。お尻を押さえたままびくっと背中を伸ばし、直立不動となった明楽は、歯を食いしばって第3派の排泄を堪える。
「っは、はーっ、はぁあーっ、はぐうぅう……っ」
口元は開いたまま、よだれが唇から零れ落ちる。蹂躙され続けた下腹部は取り返しのつかないほどに汚れ、悪臭にまみれ、少女の一番大事な部分まで侵食をはじめている。
前屈みのまま排泄音を響かせる明楽を遠巻きに見ながら、クラスメイトたちが囁きあう。
「ちょ、ちょっと、ねえ、誰かトイレ連れてってあげなよ……あれ、絶対間に合わないってば……」
「や、やぁよ!! あんた行けばいいじゃない。途中で漏らされちゃったらどうすんの?」
「私だってイヤだってば!! オモラシの後始末なんてなんで手伝わなきゃ…・・・」
(もうやだ、もうやめてよぉ……っ、ごめんなさい、ごめんな、さいっ、……謝りますから……ちゃんと、トイレ行けなくてっ、ごめんなさいっ……)
心無いクラスメイトたちの言葉に、明楽のプライドはずたずたに引き裂かれていた。
新しい学校、新しい生活、その基点になるはずのに晴れの入学式の、その当日に――惨めにも我慢できずうんちを漏らし、ひり出した排泄物にパンツをずっしりと重くしてしまう――
まして、これから1年を共に過ごすはずのクラスメイトのみんなに鼻が曲がるほどの猛烈な悪臭を何度も何度も浴びせ掛け、それですら飽き足らずとうとう中身まで漏らしてしまった。
(き、嫌われちゃう……こんなことする女の子なんか……絶交されちゃう……よぅ……)
今すぐ、この場で死んでしまいたいと思うほどの激しい後悔と恥辱。クラス中に、いや、学校中にうんちを漏らしたことを知られて、明日からどうやって生きていけばいいのだろう。それすらももう解らない。
「さあ、早くッ!! トイレ、階段の隣にあるから!!」
走ってきたポニーテールの少女が顔を背けつつドアを開けてくれる。明楽はもうお尻から手を離すこともできなかった。歩くだけでパンツの中にうずたかくトグロを巻いて詰まったウンチが溢れてしまいそうで、それを抑えるのに精一杯なのだ。押さえ込んだスカートの下で、ぐちゅぐちゅと想像したくない汚辱に満ちた音が響く。
ごきゅるるるりゅっ、ぐぼっぼっ、ぶぷっ!!
拷問のような腹音はいまだ衰えることなくうねっている。さらに吐き出されるであろう恥辱の粘土細工が、張り詰めた直腸にみちみちと詰まっている。
背中にはクラスメイト達の明らかな蔑視の視線。何度も襲い来る発作を辛うじて耐え、明楽はがくがくと震える脚を引きずり、おしりを押さえながら教室を飛び出した。
(続く)