under the rose 2010年04月の記事

明楽の入学式・11


 ――ぺぢゃっ。

「え……?」
 踏み出した足が妙な感覚を踏む。タイルの上に大きく広がる水溜りに、上履きが沈んでいた。
 そして明楽は、鼻をつく悪臭の原因が、自分だけではないことを悟った。
 ぱくりと口を開けた洋式便器――便座まで持ち上がった白いトイレは、その縁ぎりぎりまで汚れた汚水で満たされていた。真っ黒に汚れた便器が限界まで汚水を湛え、さらに溢れた汚水はタイルまでも汚している。
(う、ウソ……)
 信じられない光景に、明楽はしばし言葉を失う。
 トイレは故障していた。誰かが、利用した際に水を詰まらせてしまっていたのだろう。排水は流れずにタイルまで溢れ、便器どころか個室まで歩み寄ることも難しいほどに汚れている。
 よしんば辿り着いたとしても、この状況のトイレでうんちを済ませるなど、叶うわけもない。
「い、いや……ぁ」
 か細い声で、明楽は悲鳴を上げる。目の前にすっと真っ暗な幕が下りたようだった。
(と、トイレ、壊れて……つ、使えな……っ、こ、こんなに、我慢したのに、我慢してるのにぃっ……うんち、だっ、出せないの……っ!?)
 びくびくと引きつる消化器官の反乱に、明楽はたまらずに膝を折ってしまった。力の入らない腕は低くなった姿勢を支えきれず、少女はそのまま便器のまん前にしゃがみ込んでしまう。
(――ぁ、あ、ダメ。ぅ、あ、あっ!!)
 しゃがむ、という姿勢。
 脚を開き、腰を落とし、おしりをわずかに持ち上げて、排泄孔を下にしたその姿勢は、ちょうど和式便器にまたがる格好。つまりもっとも原始的な排泄に適した姿勢だ。

 ぶぷっ、ぶぷすっ、ぶびっ!! ぶりゅぶぶぶっぶぼぼっ!!

 既にガスの音は、本当の排泄とほとんど区別がつかない。濃密に圧縮された腹圧のせいで、まるで個体のように強烈な放屁が繰り返されているのだ。明楽本人にも、まだ『ミ』が漏れていないのかは判断できなかった。
「ぁああうっ、あああああぉああぁっ、」
 それはもはや、排泄と何ら違いはない。物理的に中身を押しとどめているとは言え、激しく蠕動する直腸と内側から捲れ上がる排泄孔は、延々と排泄器官をなぶられているのと同じ事だ。
 しかし、実際に排泄が行なわれない以上、明楽の苦しみはいつまで経っても途切れることはない。一度不調になった腹腔が、異物を吐き出すことなく再びおさまることなどありえないのだ。
 ぶりゅ、ぶばぼっ、ぶびびびびぃーーっ!!
 ぱくり、とひらいた少女の排泄孔から、隠しようもない猛烈な爆音が鳴り響く。
 朝からの活発な排泄活動によって、新たに発生したガスが放出されていたのだ。膨れ上がった下腹部を少しでも楽にするため、少女の身体は積極的に擬似的な排泄行為を繰り返す。
 だが、これらの原因となっているモノを出せないのなら、それは無意味どころか悪循環だった。
 ぐいと突き出されたおしりは、まるで不恰好なアヒルのよう。もっとも危険な体勢をとる明楽の制服のスカートの下で一週間に渡って少女の腸内で腐敗し、練り上げられたガスの塊が、猛烈な勢いでほとばしる。唸る重低音で排泄孔を惨めにひしゃげさせながら、小さなおしりをぎゅっと押さえ、明楽は便座を掻きむしった。
「ぁっあ、ぁっあぁうぁっ」
 もはや嘆きは言葉にもならない。吹き荒れる猛烈な便意の嵐が、少女の理性を打ち砕く。これからまた立ち上がり気力を振り絞って便意を堪え、他のトイレまで向かう――それがどう考えても不可能な行為であることは、明楽も理解していた。
「だ、めぇ……っ」
 明楽を襲う便意の激しさを物語るかのように、少女の下腹部は激しく波打ちつづけていた。もはや疑いようもなく、明楽はこれから始まる決壊の時を耐え切ることは不可能だ。
 これほど激しくガスを排出しても、まだなお明楽のおなかはまるで収まる様子を見せなかった。ぐるぐると唸る獣のような腹音が、固形の内容物を明楽の下腹部の底へと集めてゆく。
 わずかな力だけで支え続けられている、小さな排泄孔に。
 既に明楽の下半身は便意に占領され、植野明楽という少女は、ただ出てしまいそうなうんちを我慢するためだけに存在しているといっても過言ではなかった。
(も、もう、今日から、中学生、なのにっ……)
 ぎゅっと閉じた瞼から涙が滲む。
 ひっきりなしに唸り続ける下腹部が、ごぼりごぼりとうねり、蠢いて、下品な重低音を何度となく響かせる。
 1週間前――月をまたいで、まだ明楽が小学生だった時から溜まり、くすぶり続けていたおなかの中身が、明楽をオトナにすることを阻止するかのように暴れまわり、少女を苦しめる。
「ぁ―――」
(やだ、だめ、だめ、だめっ、だめぇ、だめぇええッッ!!)
 びくりと盛り上がった排泄孔が、とうとう絶望に屈する。明楽が、ここでこのままうんちをしなければならないことは、避け得ない。

 ぶっ、ぶぅうーっ!! ぶびっ、ぶちゅぶぶぅうっ!!
 ぶじゅっ、ぶぶぶぶびぶぢゅっ!!

 ひしゃげた排泄孔が吹き上げるオナラが、その開幕となった。
 濃密なガスの排出で下着の中身が撹拌され、また粘液にまみれた便塊が下着の中に産み出された。地獄の蓋もさながらの激しい悪臭が当たり構わずに炸裂する。
 猛烈な便意が一気に少女の腹を駆け下る。
 本来なら七日間、七回以上に分けられて排泄されるはずだった分が、一度にダムを破壊し溢れ出したのだ。一週間お通じのなかった明楽の脱糞がたったこれだけで済まされるはずがない。明楽の腸内で荒れ狂っていた便意のもとは、まだ姿を見せてすらいなかった。

 ぶっ、ぶすっ、ぶりゅぶばびっ!!

 めくれ上がった排泄孔が激しい屁音をヒリ出す。これから始まる壮大な排泄を予告するように高らかに鳴り響いた下品極まりない音に、明楽は声を張り上げた。
「やだあっ……うんち、でちゃう……うんち、うんちでちゃだめっ、がまんしたのにっ、ずっとがまんしたのにっ、うんち、うんちでちゃう、でるぅう……っ!!」
 せめて。
 最後の最後に残った少女のプライドに縋り、明楽は下着を掴んで引きちぎらんばかりに引っ張り、汚れきったお尻を露にする。凄惨なまでに汚れきった下着の中から、べちゃ、と溜まっていた汚辱の塊が足元の汚水に落ち、飛沫を立てる。

 ぼとっ、べとぼちゃぼととっ!! ぶびっ、ぶぢゅぶぶぶぼっ!!!

「ぁああぅうっ……ぁあああああっぁ、っ」
 明楽の悲鳴もよそに、ごぶりと吐き出された硬質便の塊が、圧倒的な質量を爆発させた。下着の隙間には収まりきらない大量の極太の便塊が、直接、汚水まみれのタイルの上にヒリ出されてゆく。
 ガスの排出とは比べ物にならない、なろうはずもない。
 猛烈な腹痛と排泄欲求で、明楽はもうまともな言語すら発せられなかった。ぐっと食いしばった歯の隙間から、だらしなく唾液がこぼれ落ちる。

 ぶぶにゅみちみゅちっ、ぶぶぴっ、みちゅみちっ、ぶりゅうぃいっ

 今度は、硬質便とも違う感触。栓の役目を果たしていた排泄孔直下の巨大な塊が排泄されたことで、その奥に順番に詰まっていた排泄物が次々に押し寄せてくる。直腸を満たすのは、いつも明楽がトイレで済ませているのと同じ、程良い硬さを保った焦茶色の粘土細工だ。
 ただし――その量は桁外れに違う。1週間分の食物を溜め込み続け、とうとうそれを排出する機会を得た明楽の排泄器官は、この機を逃さずありったけの中身を絞り出そうとしていた。
「ひぐぅっ……!!」
 圧倒的な質量でこね回される排泄孔から、小さな孔を限界まで押し広げ、ついに第3派の排泄が到来した。
 汚れたおしりをひくつかせ振りたてながら、明楽は押し寄せる汚濁を塞き止めようとわずかな抵抗をした。せめて少しでもトイレの奥へ進もうとするのだが、しかし下腹部を支配する便意は少女になけなしの羞恥心を守ることすら許さない。

 ぬぬぶっ、ぶびっ、にちゅみちゅむちっににゅっ、ぶびぶぼばりゅうっ!!!

 茶色の軟体動物が、体液を撒き散らし、下着を引きちぎって明楽の身体の中から這い出してゆくかのような光景だった。伸びきったゴムの隙間からうねうねとのたうつウンチが溢れ、明楽の脚の間に積みあがってゆく。汚らしい排泄音を撒き散らしながら、明楽の下半身に汚れが蓄積してゆく。下着の隙間からつぎつぎと野太い茶色の塊が押し出され、床にべちゃべちゃと転がった。
 次々と産み落とされる恥辱の塊が、少女の心を完膚なきまでに切り刻んでゆく。
「ぁ、あっ、あふっ、く、ぐぅっ……」
 なんとか排泄をとどめようと腰をくねらせる明楽だが、腹痛に悶え排泄の解放感に震える下半身は何度となく絶頂へと突き上げられるばかり。むしろその行為は自分自身が吐き出した汚辱の塊が積み上げられた山を左右に拡げるだけだった。
 トイレの一面を覆う汚水の上、みるみるうちに焦茶色の山が積みあがってゆく。
 その間にも、腸液に覆われることで抵抗を無くした塊が、ぐねぐねと少女の小さな排泄孔を押し広げてゆく。
 可憐な少女の腹部で捏ね上げられ、貯蔵されていた悪臭を伴う焦茶色のオブジェは、前衛芸術とばかり複雑な形をこねくり回し、間抜けな放屁の音を伴って乙女のプライドを叩き壊すようにひりだされる。 生命活動の終着点、たとえ生涯愛する相手でも晒したくは無いと誓う、恥辱にまみれた排泄行為。
「やだ……ぁっ……」
 たとえようもない程の悪臭と、まるでこの世に地獄の蓋が開いたかのような惨劇。泣き崩れる明楽の耳に、さらに信じられない光景が映る。
「ね、ねえ……」
 いつの間に時間が来たのか、トイレの前には何人もの少女達が立っていた。一様に顔を青褪めさせ、ぎょっとした表情で大きく距離をとり、明楽を睨んでいる。トイレの入り口近くの床にしゃがみ込み、大量の汚物を足元に積み上げてなお排泄を続けようとしている明楽と――床一面に広がる汚水の水たまりを。
「ぁ……」
 きゅう、と明楽の心臓が跳ねた。
(や、やだ……っち、違うの、ち、ちが……っ)
 この状況で、汚水まみれになって故障したトイレと、そのすぐ前で制服を派手に汚し、猛烈な脱糞をしている少女――本来無関係なはずのふたつを、切り離して考えるのは不可能だった。
「うそ……なによ、こんな所で何やってんのアンタ」
「うわ、信じらんないッ!!」
「こ、これあんたがやったの? ねえ!?」
 ざわつく少女達の詰問に、明楽はすうっと気が遠くなるのを感じた。
「あ、ち、違、っ……あくぅぅあ!?」

 ぎゅるるるっ、ぎゅるっ、ぐりゅるるっ、ごきゅるぅうぅる!!!

 腹部を駆け抜ける荒々しい衝動は、明楽が気絶することすら許さない。
 いや、もしそうでなくとも、トイレの入り口にしゃがみこみ、踏ん張ったままの少女に弁解の余地があっただろうか。
 羞恥と混乱に幼児化した思考で腰をくねらせるも、便意は止まらない。続けて腹奥がうねり、ギュルルルルルルッという激しい異音を伴って、第4派、第5派の排泄が押し寄せる。
 既に弁としての役目を失った明楽の排泄孔は、そのまま直腸に殺到した撹拌された粘液と、排泄物が混ざったものを激しく地面に吹きつけてしまう。主人の意に添わぬとは言え、何度となく汚辱を吐き出して排泄の準備の整った下半身は、荒れ狂う排泄衝動のままにありったけの中身を吐き出した。
 めくれがった排泄孔を貫く固い感触と、みちみちと音を立てて少女の足元に山積みになる焦げ茶の塊。熱量をごっそり失った排泄孔はぎゅうと収縮し、便意の第3派の成すがまま半粘性の排泄を繰り返してゆく。
 惨めにひしゃげた音を繰り返しながら、吐き出された大量の汚物が大きくとぐろを巻いて外にこぼれ落ち、昇降口に焦げ茶色の汚辱を撒き散らしてゆく。長い間腹痛を我慢し、直腸の蠕動に内容物を撹拌されて分泌され、溜まった腸液がまるで浣腸と同じような役目を果たし、激しく収縮した排泄孔から勢い良く飛び出して廊下に飛び散る。
 1週間以上前、ちょうど3月の最終日。明楽が、まだ小学生だった頃に食べたものが、実に200時間近くにも及ぶ長い長い熟成期間を経て、オトナの仲間入りをしたはずの明楽に屈辱のオモラシを強制している。
「ち、ちがうのっ、違うのぉっ……見ないで、見ないでぇえっ!!! あぐ……ふぐぅうぅっ……ぁああああ!!!!」
 無数の軽蔑と侮蔑の視線の中、明楽はもはや取り返しのつかない屈辱をどうにか押さえこもうと必死だった。

 ぶぷっ、ぶぴっ、ぷぴぴっ、

 うんちが止まらない。文字通り、おなかが壊れてしまったかのようだった。
 ひくひくと蠢いては下品なおならを繰り返し、盛り上がった明楽の排泄孔がにじみ出る腸液を撹拌する。直腸で分泌された粘液が蠕動を促し、少女に屈辱的な排泄姿勢を強制する。ぶじゅぶじゅと漏れ出るガスの連続音は、少女の直腸が圧倒的な質量に半ば占領され、限界を迎えつつある事を示していた。少しでも内部の容積に余裕を作るため、腹圧に負けたガスが自然に漏れ出しているのだ。
「ぁあああああうぅぅっ!!! また、またでるぅ……でちゃぅ…っ!!!」

 ぶびっ、ぶりゅっ、びりゅりゅりゅりゅっ、ぶじゅぶぢゅぢゅるるるびちゃっ!!
 ぶじゅぶばぶぼっ!!ぶぶぶぼごぼぶぼぼぼぼりゅーーっ!!!!

 裏返った声で次の便意を訴え、排泄を予告した明楽のおしりで、激しい腹音が轟いた。
 今度は激しく土石流のような半粘性の塊が吹き出す。量も匂いも圧倒的で、積み上げられたうんちの塊をそのまま押し流さんばかりだ。これらは明楽が過剰に摂取した便秘薬の薬効によるもので、排泄器かんの遥か奥に詰めこまれていた分になる。
 だが、まだ終わらない。明楽の屈辱の排泄劇は、こんなもので終わるわけがない。何のために今日一日を耐え抜いてきたのか。
 ――そう言わんばかりに、固形から液状、ありとあらゆる形状、色彩、悪臭のバリエーションを保ちながら、明楽の排泄は続く。
「やだ……もうやだぁ……っ」
 断続的に絞り上げられる消化器官。顔を真っ青にして明楽はおなかを抱えこみ、沸き起こる便意を抑えこもうとする。
 再度、激しい腹のうねりとともに、どぱぁと半粘性の塊が激しくトイレの中へ叩き付けられる。今日一日、明楽の下腹部から悪臭が撒き散らす原因となった大元の汚辱が吐き出された。
 すでに一人で立っていることも叶わない明楽は、成す術なく転び、自分の排泄物で汚した床の上に派手にしりもちをついてしまう。長い我慢でスカートは膝の上まで捲れ上がり、ぐちゃぐちゃと小さなおしりが足元にうずたかく積みあがった汚濁を掻き回す。
 あまりにも異様な排泄。ただのオモラシでは片付けられない大量脱糞に、周囲の生徒達も言葉を失っていた。トイレですればとか、せめて物陰でとか、我慢しろとか、そうした言葉では片付かない光景だ。常識では考えられない途方もない事態が、圧倒的な説得力をもって眼前に繰り広げられている。
 排泄と言う自然の摂理に弄ばれ、記念すべきオトナへの第一歩を踏み出した日に、訪れたあまりに不幸な少女の運命。――それを望む者がいる限り、この悲劇は終わらないのだ。
「あ、あ、あ……」
 およそ、20数分に渡って。明楽の排泄孔はいつまでもぱくりと開き、そこから悪臭を伴う塊を吐き出し続けた。



 (了)
 

2010/04/01 我慢長編  

明楽の入学式・10

 一度汚辱を吐き出した排泄孔は、もはやか細い力しか残ってはおらず、焼け付いたようにひくひくと蠢くばかり。ごつごつと硬く熱い塊が下着をずっしりと引っ張っている。それでも、明楽は残りわずかな力を振り絞って、階段を這うように降りていった。
 そもそも、オモラシの前にトイレに駆け込むことはすでに不可能だ。
 パンツの中にはずっしりと不快な重みがつまり、一歩動くたびにぐちゃぐちゃと言葉にするのもおぞましいほどの汚辱が股間に広がってゆく。揺るがしようのないうんちのオモラシの事実は、明楽の心をずたずたに引き裂いていた。
 だが――なおも激しい濁流が、少女の腹奥で依然猛烈に渦巻いている。これまでの排泄などただの序章と言わんばかりの、激烈な苦痛と排泄衝動が、なおも明楽を責め続けていた。
(あ、あと、半分っ……)
 手摺りに寄りかかるような格好で慎重に最後の一段を降り、明楽は2階への階段の途中、踊り場に到着した。待望の目的地――トイレはあともう半分、階段を降りきったところにある。
 だが、今の明楽にはほんの数10mの距離が無限にも感じられた。おなかの中を荒れ狂う嵐は全く収まることなく、排泄孔はぷぴっ、ぶちゅるっ、と断続的に粘液を吐き出している。
 それでもわずかな希望、おなかの中で荒れ狂う中身を出せる場所を求めて、明楽は前に進むしかないのだ。

 ぶぷっ、ぷすっ、ぷちゅっ、ぷっ、ぷ、ぷぅぅうっ!!

(やだぁ……もう出ないでぇっ……お願い、だからぁ……っ)
 泣きべそをかきながら粘つく音のオナラを撒き散らしながら、限界ギリギリの爆発危険物となったおしりを押さえ、明楽はよろめいた身体を支える。スカート越しにもはっきりとわかるほど、熱く重い感触が伝わる。自分のひり出した塊のおぞましさに明楽は低くしゃくりあげる。

 ごきゅ、ぐりゅるるっ……ごりゅ、ぐきゅるぅぅうぅ……

「は、ぐぅぅうう…っ」
(と、トイレ、おトイレっ……はやく、う、うんち、トイレ、おトイレぇ……!!)
 最後の一線で、明楽は真っ赤になって歯を食いしばり、耐え続けた。トイレまで辿り着けば、もう我慢しなくてもいいのだ。おなかの中で荒れ狂う塊を、心行くまでぶちまけることができる。
 それさえできれば、もう何でもよかった。明日からの学校生活も、憧れの制服も、もう明楽の思考には残っていない。
 最後の最後に気力を振り絞って、絶望の淵にしがみ付き、ずっしりと重いパンツを抱えながらも、明楽は全身全霊を賭して凶悪なまでの便意を堪え続けていた。
 留まるところを知らず猛烈に暴れ回る排泄衝動に対し、酷使された肉体は既に限界を迎えており、ひしゃげた排泄孔はひっきりなしに粘つく爆音を奏で続けている。

 ぶびっ、ぶちゅ、ぶびぃいいいーーーっ!!

「あぐ……っ……ぅぁ…ッ!!」
 両手でおしりを押さえ、オナラを漏らしながら、次のトイレ――排泄場所を求めて邁進する。それはまるで、体内で発生したガスを推進力に歩いているような惨めで滑稽極まりない姿だった。
「ぁ、あ、ぉ、ぅ、ぃ、いっ、」
 文字通り、身も心も強烈な排泄衝動に蹂躙された哀れな少女の唇からは意味の通らない呻きがこぼれ、食いしばった口元から堪えきれない唾液が溢れる。腸内を荒れ狂う腐った汚泥のせいで、明楽は意味のある思考もできずにいた。

 ぶす、ぶ、ぶうぅっ!!
 ぶぷっ!! ぶぉぼびびっ、ばぶっ!!

 踊り場の手すりに寄りかかった明楽のスカートの下で、腸液にぬめる排泄孔がめくれ上がり、ひしゃげてねじれ、下品な音を立て続けに爆発させる。
「ぁ、あ、っ、で、出ないで、でちゃ、ダメぇ……っ!!」
 既に、何度となく膨大な量のガスと、両手に余るほどの固形便の通過を許した明楽の排泄孔はすっかり粘膜を裏返らせて拡がってしまい、再度の排泄のための準備を着々と整えつつあった。丸いドーナツ状に収縮した排泄孔は、明楽の意志に反してガスを吐き出す。静まり返った階段には次々と少女のものとは思えないほど下品極まりない放屁音が鳴り響く。
 普段なら控えめな明楽に相応しい、色素の沈着もほとんどない楚々とした可憐なすぼまりは、汚れた粘液にまみれながらくちりと内臓の肉色をそとにはみ出させ、ぱくぱくと口を開いている。
 いまや明楽のおしりの孔は、ところ構わず悪臭を撒き散らす下劣な肉の管と成り果てていた。
「ふ、はぁ…っく、ふぅっ……」
 わずかな深呼吸にも過敏に反応し、明楽の内臓は排泄器官に刺激を伝播する。耐えに耐え続けた便意は濃縮され、毒と化した内容物が腹奥でびくびくとうねる。その様は、もはや別個の生命が宿っていると評しても支障の無いレベルだ。

 ごきゅ、ぐりゅっ、ごぼぼりゅっ!!
 ぶ、ぶちゅるっ……ぶばっ!!

 そして、そこが吐き出すのはただのガスだけに留まらない。排泄孔はまるで別の生命体のように激しく蠢き、少女のおなかの内側にに閉じ込められたごつごつと固まる中身を吐き出さんとしていた。腸音はおさまることなく、明楽のうんちの孔は体内からの圧力に屈しそうに盛り上がっては中身を覗かせている。
 必死になっておしりの孔に神経を集中し、最悪の事態だけは回避しようとする明楽だが、酷使され続けた括約筋はすっかり疲弊していた。
「うぁ……くうっ……ふぅっ」
 明楽の苦しげな吐息と共に、排泄孔がきゅうと絞り上げられる。しかし、少女が渾身の力を込めて元の形を取り戻しても、すぼまりはすぐに盛り上がり、ピンク色の粘膜部分を覗かせた。
(も、もれちゃぅ……でっ、で、ちゃうっ、またでちゃうっ、……ぅううううぅう〜〜っ!!!)
 分泌された腸液にぬめる肉の管。排泄孔のすぐ真上まで、びちびちにうねる褐色の粘塊がやってきている。一週間もの間閉じ込められたため、完全に腐敗して悪臭と汚辱の塊となったモノが、はちきれそうに詰まっている。文字通りの“腸詰め”状態だ。少女の小さな排泄器官を蹂躙せんとばかりに激しく蠕動する直腸は、中に詰まった異物を排除しようと柔毛を波打たせ、腹音を唸らせて排泄を急かす。
「ぁ、あっあ、あーーっ!!!」

 ぶりゅぅうっ!! ぶちゅ、びちびちびびちゅっ!!

 灼熱の塊が下着に激突する。体内で捏ね上げられた塊が狭い布地をさらに盛り上げ、ごつごつとした感触の間にぬめる粘塊を満たしてゆく。もわっとこみ上げた臭気が撒き散らされ、明楽の脚を茶色の粘液が滴り始めていた。
(だ、め、だめ、だめ……っ)
 渾身の力で引き絞られる括約筋。しかし長時間の酷使の末に疲弊したそこは、もはや少女の意志を無視して口を開こうとしていた。
 それに加勢するかのように、本来排泄とは無関係の胃袋と小腸までもが蠢いて、明楽に排泄を要求していた。
 長い間本来の役割を忘れていた少女の排泄器官は、そのブランクを取り戻すかのように活動を活性化させ、おなかの中身を絞り出そうとしている。

 ぐるぐるっ、ぐりゅるぐるるぐるぐるぐるぅっ!!

(ゃだ……でないでぇっ、……っ、うんちでるっ、でるうんちでるっ、でるぅう!!)
 かつては便秘という形でオモラシを防ぐために味方をしてくれた、直腸入り口付近の硬質便は、いまや明楽のパンツの中にずっしりと詰まったままだ。怒涛のように流れ出そうとする後続の排泄物を押さえるものは何もなく、身体の機能までもが明楽を裏切っていた。
 かすかに残された少女としてのプライドのみが、疲弊し磨耗した括約筋を引き絞り、まるで意志を持ったかのように暴れ回る排泄物をどうにか腸内に閉じこめている。少女の両手は緊張と焦燥に、知らずスカートの上からぐちゃぐちゃとパンツの中をかき回し、お尻はおろか股間までをも汚らしい茶色に染めてゆく。
 それでも激しい腹腔のうねりは天井知らずに高まり続けていた。 
「は……はぁっ、は、ぅ……、ふぅっ……うぅぅっ……」
(だ、ダメ、出ちゃう、うんち、っ、と、トイレ、トイレっ、お、とイレ、トイれぇえ……だめ、でちゃう、おうちまでがまんできないっ、トイレ、うんちといれうんちでるといれうんちうんちうんちでちゃうでるでるでるぅうっ……!!)
 不恰好におしりを押さえ、くねくねと身体を揺すり、ねじり、もじもじと脚を動かして、明楽はがくがくと震える膝を引きずって、階段を降りはじめた。苛烈な生理現象に思考を退化させた明楽の脳裏には、最も慣れ親しんだ白く清潔なトイレの便器が閃光のように焼き付いていた。
 トイレまで我慢――
 それは、今の明楽にとってあまりにも絶望的な、15段、30mという距離。
(は、はやくっ、トイレ、おトイレっ、も、もれちゃ……ダメ、ダメえっ)
 永遠にも等しい道のりを前に、明楽はまだ見ぬトイレを渇望する。
 しかし脚が言うことを聞かない。がくがくと痙攣をはじめ、動かなくなった膝が自然に折れ曲がり、いつしか明楽のブラウスの背中をびっしょりと汗が濡らしていた。



 何度も何度も猛烈な波を乗り越え、排泄孔を渾身の力で引き絞り、それでもなおぶぢゅぶぢゅと汚らしい音をパンツの中に吐き出して。途方も無い旅路の果て、明楽がどうにか辿り着いた一階のトイレは、奇跡的に無人だった。
(や、やっと、やっとウンチできるっ……)
 明楽にとって、至福、幸せの絶頂の瞬間であった。渇望し続けたトイレ、うんちのできる場所まで、なんとか被害を最小限にして辿り着いたのだ。既に重く盛り上がったパンツの中にはずっしりと排泄してしまった焦げ茶の塊が詰まっているが、それでもなお――明楽の腹は激しくぐるぐると唸りを上げ続け、体内に溜まったモノを残らず絞り出そうとうねり続けている。
 狭いトイレの中、二つだけの個室のうち、片方には小さく『故障中』の張り紙があった。
 だが、少なくとももうひとつは健在だ。開きっぱなしのドアの奥では、見慣れた白いフォルムの洋式便器が、明楽をそっと出迎えてくれていた。

 ウンチのできる場所。
 ウンチをしても良い場所。

 待望の個室、白く口を開けた様式便器を前に、明楽は壁に手をついて寄り掛かりながら、慎重に一歩ずつ進んでゆく。わずかな均衡が破られれば、途端に大惨事が引き起こされてしまう。これ以上のオモラシをパンツが受け止めきれるわけもなく、吹き出した濁流はそのまま足元に飛び散ってしまうに違いない。それだけは、それだけはなんとしても避けなければいけなかった。
 少女の身体はすでにはしたなく待ちかねた排泄への歓びにうち震え、ぐるぐると猛烈な排泄反応をはじめている。
(といれ、トイレトイレ、おトイレ…うんちでちゃう、うんちでるっ…うんち出せる…っ!!)
 既に恥じらいを失いつつある明楽の心は、ようやく訪れた排泄の機会に歓喜を奏でる。もう我慢しなくてもいい。そう考えるだけでぞっとするほどの解放感が少女を包み込む。
 しかし、同時にその安心感は、明楽の排泄器官に油断をもたらしていた。

 ぶびっ、ぶびぃいーーーっ!!!

 ごぼりっ、と腹奥で不快な感触が湧き上がったかと思った瞬間、明楽の排泄孔がびちびちと激しい音を立てた。教室の広い空間ではなく、トイレという限られたスペースに散布された悪臭は先程の比ではない。個室を前にしてさらに活性化した明楽の排泄器官は、ほとんど本当の排泄と同じような状態で濃縮されたガスを吐き出していた。

 ごきゅるるるるるるぅっ!! ごろっ、ごぼっ!!

「――ぁあはぁああっ!!」
(っ、だ、だいじょうぶ、まだ出てないっ、お、オナラしちゃっただけ……っ)
 咄嗟に押さえたスカートのお尻、下着の中にぶつけられたガスの塊が、下着にへばりついた粘液をぶじゅぶじゅと攪拌する。もはやオモラシという事実は確定でありながら、明楽は被害の拡大を押さえ込むため、便意の二次災害を必死に腹奥にねじ込んでゆく。
 そんなささいな感傷は許さぬとばかり、下腹部のうねりがひときわ大きく似え滾る。灼熱の塊が、明楽のおしりを覆う下着のすぐ下でのたうつ。
 どうしようもない生理現象の猛威。荒れ狂う衝動に突き動かされ、泣きべそをかきながらも、明楽は個室のドアへとよたつきながら入っていった。

 ――しかし。



 (続く)
 

2010/04/01 我慢長編  

明楽の入学式・9

 明楽の意識が真っ白に塗りつぶされる。それだけは、絶対に知られてはいけなかったのに。
「なんだ、さっき言わなかったじゃないか……まあいい、早く言って来い」
「っ……ち、違……」
 明楽は必死に否定しようとしていた。しかし、トイレという単語に少女の下腹部は過敏なほどに反応してしまう。反射的に腰を浮かせかけた明楽の双丘の隙間で、ぷくぅ、と排泄孔が盛り上がる。

 ぐきゅぅぅっっ、ぎゅるごぶっ、ごぼぼぼっ、ぶぷっ!!

「ぁああうぅぅううぅぅぅうううぅうぅっ!?」
 汚らしく澱んだ濁流が下水に流れこむかのごとき下品な音を立て、明楽の下腹部が激しくうねった。排泄器官と一体化した腸内の蠕動は、ダイレクトに明楽のおしりの孔を直撃し、土石流のように渦巻く便意を爆発させる。
 辛うじてその役目を果たしていた括約筋が弛緩し、おしりの間に張りついていた下着のなかにぷぢゅ、ぷびゅるっと粘液混じりのガスを吐き出す。
(で、でちゃう、でちゃうだめでちゃううんちでちゃうぅうぅうっ!?)
 激しく蠕動を繰り返す直腸は、分泌された腸液を混ぜ合わせ、固まった内容物を捏ね上げてゆく。ぼくん、と脈動する下腹部はまるで神聖な出産の時のように激しく蠢いている。だが、少女の体内にあるものは命の芽生えでも何でもない。ただの食物の残り滓でしかない。
「ちょっとぉ、マジで? さっきのもあの子?」
「ねえ、あの子そうよね? 入学式ですっごい臭いオナラしてたの、あの子じゃない?」
「うっそぉ、まだ我慢してたの? ……あれって、大きい方だよね?」
 ひそひそと囁き交わされるクラスメイトの非難。隠そうともしない少女たちの囁きを、明楽の耳ははっきりと捕らえてしまう。
「ひょっとしてもう漏らしちゃってんじゃないの?」
「まさかぁ……いくらなんでも、この歳になってそれありえないって」
「でも、ほら……」
 明楽は耐え切れなくなってぎゅっとおなかを押さえた姿勢のまま動けなくなってしまう。そんな明楽に追い討ちをかけんばかりに、腸が不気味に蠕動し、明楽に排泄を訴える。

 ぎゅるぎゅるるるっ、ぐぎゅうううううっ……!!

「だめ、ぇええええ……っ!!!」
(こんなところでウンチなんか、だめ、っ、だめえええっ!!)
 びくん、と伸びた明楽の太腿に緊張が走る。伸ばした指で恥も外聞もなく排泄孔を押さえ、震える膝と腰は、すでに獰猛な排泄欲をなだめることすら満足にしてくれない。
 喉がカラカラだった。明楽の排泄孔は一秒間に何度も盛り上がり、その中身をぶちまけようと伸縮を繰り返す。辛うじて決壊を先延ばしにできていることも奇跡に近かった。
「ぁあうああああっ!?」
 猛烈な便意が下腹部で爆発する。同時に疲弊した括約筋が惨めにひしゃげた音を立て、腸液に粘つく放屁音を連発させた。

 ぶっ、ぶすっ、ぶちゅっぷぷっ、ぷぅうーーーーっ!!

「っ!!!」
 音程はずれのトランペットを思わせる、間抜けなほどの放屁音が、教室に響く。
 教室に一斉に警戒が走った。
「や………ち、違うのっ、その、違うの!! わ、私っ、わたしっ……!!」
 とっさにおしりを押さえ込む明楽だが、構わずガスは漏出を続け、辺りにはむせ返るほどの汚臭が撒き散らされてしまう。耐え切れなくなったクラスメイトが机を揺らして席を離れ、距離をとる。
「ぃ、ぃやぁああああっ……」
 絞り出すような悲鳴を上げ、明楽は机に突っ伏した。
(で、……出ちゃった……す、すごく臭いの……いっぱいっ……)
 この世界でこれ以上はないというくらいの、汚らしく穢らわしい毒ガス。それは明楽が自分の身体の中で作り出したものだ。自分の不始末が、言い訳の聞かない自分の身体がひり出した最悪の汚染物質だ。
 どこか他人事のような認識は明楽がその事実を認めたくなかったからに他ならない。思わず二の足を踏みたくなる程の悪臭、明楽のおなかの中の凄惨な状況をありありと知らせる腐臭の最前線で、ポニーテールの少女がはっきりと不快な表情を浮かべ、顔を背ける。
「や……ぁ……ち、ちがうの、こんな、ちがうのぉ……」
 堪えようもない程の恥辱。明楽は舌を噛み切りたいほどの羞恥に、俯いて泣きだしてしまう。
 しかし、明楽を襲う悲劇はそれだけにはとどまらなかった。
 うねる下腹部はさらに立て続けに爆発し、極限の均衡が乱された。

 ――ぐる、ぎゅるっ、ごぼっ!!

 S字結腸の収縮と共に、腹奥に押し込められていた便塊が一気に押し出された。すでにまったく余裕の残されていない直腸が、強制的にねじ込まれる焦茶色の塊に占領される。
(―――ぁ、あ、あ、あっ、あーっっ!!)
 明楽の思考が、汚らしい汚辱の土褐色に染まる。
 生理現象と排泄の摂理にともなって、びくりと裏返った排泄孔がスカートの下で粘つく音を立てた。

 ぶちゅ、ぶびっ、ぶぶぶっ!!

「ぁあああ、ぁ、ぁっ、あ、ぁっ!!」
(で、っ……でちゃ、っ!!)
 盛り上がった排泄粘膜を震わせる激しいガスの放出音に続いて、圧倒的な灼熱感が明楽の下の穴をこじ開けてゆく。酷使された括約筋をして感じ取れる、途方もなく太く大きな固形の感触。
 ぎちぎちと、排泄孔を丸く押し広げ、ドーナツ状の括約筋を限界まで拡張する黒々とした塊。消化の果てに水分を限界まで吸収され、粒子状になって固まった硬くごつごつとした焦げ茶色の塊が、少女のおしりの孔のすぐそこまで降りてきた。

 みちゅっ、ぷぷ、ぷぷぷすっ、ぷすすぅっ……

 小さなガスの放出を繰り返しながら、激しい運動に反応し、腹腔が活性化する。盛り上がりを繰り返した明楽の排泄孔が、ついにぱくりと口を開いた。
 その奥から腸液に塗れた硬い内容物が、湯気とともに頭を覗かせる。
(だ、だめっ、出ちゃダメえッ!!!)
 明楽はなりふり構わず、指先で顔を覗かせたうんちの頭を押さえ込んだ。
 思い余った明楽は、下着の上から、直接、吐き出されようとしている汚辱の塊を無理矢理おしりの中に押し戻そうとしたのだ。
(こんなところで、ぜっっったいに、だめえぇっ……)
 漏らすまいというただ一心で、明楽は排泄という大自然の理すら否定しようとしていた。
 かちかちに固まった便塊が、明楽の手と下腹部の蠕動に挟まれてぐちゃりと潰れ、下着の中で捲れ上がった排泄孔が小さなおならを繰り返す。明楽の腹の中には七日にも及ぶ便秘の産物がぎっしりと蠢いており、排泄器官はその全ての内容物を吐きだそうと蠕動を続けているのだ。
「や、やぁ……だめ、だめぇええ!!!」

 ぬぬぬ…にち、ぬちぬち、にちにちちちっ、ぬちゅっ……

 排泄衝動に突き上げられ、白く柔らかな排泄孔が、粘液の助けを借りて大きく拡張されながら、ぬちぬちと音を立てて硬い塊を絞り出してゆく。身動きできない少女の白いお尻を引き裂くように固形の便塊が次々と顔を出し、パンツの中へと吐き出されてゆく。
 お尻を包む布地をべっとりと汚して、重く沈む熱い塊の感触に、明楽は悲鳴を上げた。
「ぁあっ、はっ、だめ、ダメぇ、だめえっ、だめえええええっ!!」
(う、うんち……でちゃった……オモラシ……やだっ、もう、オトナなのにっ……)
 もはや明楽は一人の少女というよりも、うんちを我慢するためのひとつの機械だった。もじもじとくっつけられた脚も、おなかとおしりをきつく押さえる手も、全て望まない排泄を耐えるために動いている。その機能も酷使され疲弊し消耗し、完全には機能をしていない。
「はぐっ……うぅう……」
 のたうつ下腹部を抑制し、激しく腰を使いながら便意に抵抗する明楽。
 びくびくと跳ねる腰は前後左右に動き、少しでも迫り来る便意を押さえようともがく。
 担任の教諭も、クラスメイトも、誰もが言葉を失って遠巻きに明楽を見ていた。まさか本当に、教室の真ん中でうんちを始める生徒が居るなんて想像もしていなかったのだろう。
「っ、いいから、我慢できないなら早くトイレ行きなさいっ!!」
 口元を手で覆いながら、明楽の傍にただ一人残ったポニーテールの少女が叫ぶ。
 明楽は耳を塞ぎ暴れだしたくなっていた。無論、下り続ける腹がそれを許すわけがない。まるで張りついたようにお腹とおしりに伸ばされた手は動かない。
「ぁ……ぁ」
「お腹、壊してるんでしょ!? はやくトイレ行ってきなさいっ!!」
 ぼうっと霞む頭の中で、明楽はぶんぶんと首を振った。
「で、っ……だめ、違うの…」
「何が違うのよ!! もう漏らしてんじゃない!! なんで早くトイレ行かないの!? 早くっ!!」
(ち、違うの、ちゃんと……行こうとしたのっ、うんち、ちゃんと、トイレまで、ガマンっ……っあ、あうぅうあうっ!?)

 ぬちゅぶちゅ、ぶっ、ぶぴっ、ぷぅ、ぷすっ、ぷっ……
 ぶっ、ぶびゅ、ぶりゅぶびぶちゅぶぶぶぅっ!!! みちゅみちちちちぃ…ッ!!

 排泄孔を大きく押し広げ、さらなる排出の第2派が進軍する。下着の上からでもはっきりと解るほどのごつごつとした感触は、紛れもない明楽自身が溜めこんだ食物の残り滓。
 すさまじい悪臭を撒き散らしながら。明楽は両手をスカートの上からお尻に押し当て、排出されたばかりの塊を伸びきった排泄孔の中に無理矢理押し戻そうとする。
 しかし、腹腔がうねり引き絞られ、暴力的なまでの便意を伴って吐き出される塊を押し戻すことはかなわない。すっかり裏返って内臓の肉色を覗かせた排泄器官は、一週間と言うモラトリアムを許していた排泄物を残らず絞り出さんとのたうった。
「はぐっ……っ!!」
 白く柔らかな布地を汚染し、ヒリ出された巨大な便塊は大蛇のように折れ曲がり、重なり、ずしりとトグロを巻き、明楽の下着を膨らませてゆく。焦げ茶に染まった下着の中心部が大きく盛り上がり、そこからぷすぷすとガスを伴った汚辱の塊がはみ出した。
 分泌された直腸粘液がぴゅるっと吹き出し、下着の隙間から脚を伝い落ちる。
 途方もない悪臭が広がり、スカートを黒々と染める明楽のオモラシに、一斉に生徒たちが悲鳴を上げた。
「ぅ、う、あ……」
 沈黙の支配した教室の中、明楽はのろのろと中腰のまま、席を立った。
 ぶちゅ、ぶちゅ、と汚らしい音を立てる下半身を抱えながら、亀のような歩みで教室を横切ってゆく。明楽の行く手を避けるようにクラスメイトの人垣が割れ、明楽は死ぬよりも辛い恥辱の中、教室のドアに辿り着いた。
「ひぐっ!!」

 ぶぶ、ぶびっ、ぶりゅぶちゅぼっ!!

 途端、捻り上げるような腹部の蠕動とともに明楽の排泄孔を強烈な便意が貫いた。お尻を押さえたままびくっと背中を伸ばし、直立不動となった明楽は、歯を食いしばって第3派の排泄を堪える。
「っは、はーっ、はぁあーっ、はぐうぅう……っ」
 口元は開いたまま、よだれが唇から零れ落ちる。蹂躙され続けた下腹部は取り返しのつかないほどに汚れ、悪臭にまみれ、少女の一番大事な部分まで侵食をはじめている。
 前屈みのまま排泄音を響かせる明楽を遠巻きに見ながら、クラスメイトたちが囁きあう。
「ちょ、ちょっと、ねえ、誰かトイレ連れてってあげなよ……あれ、絶対間に合わないってば……」
「や、やぁよ!! あんた行けばいいじゃない。途中で漏らされちゃったらどうすんの?」
「私だってイヤだってば!! オモラシの後始末なんてなんで手伝わなきゃ…・・・」
(もうやだ、もうやめてよぉ……っ、ごめんなさい、ごめんな、さいっ、……謝りますから……ちゃんと、トイレ行けなくてっ、ごめんなさいっ……)
 心無いクラスメイトたちの言葉に、明楽のプライドはずたずたに引き裂かれていた。
 新しい学校、新しい生活、その基点になるはずのに晴れの入学式の、その当日に――惨めにも我慢できずうんちを漏らし、ひり出した排泄物にパンツをずっしりと重くしてしまう――
 まして、これから1年を共に過ごすはずのクラスメイトのみんなに鼻が曲がるほどの猛烈な悪臭を何度も何度も浴びせ掛け、それですら飽き足らずとうとう中身まで漏らしてしまった。
(き、嫌われちゃう……こんなことする女の子なんか……絶交されちゃう……よぅ……)
 今すぐ、この場で死んでしまいたいと思うほどの激しい後悔と恥辱。クラス中に、いや、学校中にうんちを漏らしたことを知られて、明日からどうやって生きていけばいいのだろう。それすらももう解らない。
「さあ、早くッ!! トイレ、階段の隣にあるから!!」
 走ってきたポニーテールの少女が顔を背けつつドアを開けてくれる。明楽はもうお尻から手を離すこともできなかった。歩くだけでパンツの中にうずたかくトグロを巻いて詰まったウンチが溢れてしまいそうで、それを抑えるのに精一杯なのだ。押さえ込んだスカートの下で、ぐちゅぐちゅと想像したくない汚辱に満ちた音が響く。

 ごきゅるるるりゅっ、ぐぼっぼっ、ぶぷっ!!

 拷問のような腹音はいまだ衰えることなくうねっている。さらに吐き出されるであろう恥辱の粘土細工が、張り詰めた直腸にみちみちと詰まっている。
 背中にはクラスメイト達の明らかな蔑視の視線。何度も襲い来る発作を辛うじて耐え、明楽はがくがくと震える脚を引きずり、おしりを押さえながら教室を飛び出した。


 (続く)
 

2010/04/01 我慢長編  

明楽の入学式・8

「よし、全員プリントは回ったな? 3枚目の……」
「先生、足りませーん」
「っと……おや、済まん、こっちにあるんで取りに来てくれ」
 机の上のプリントの束を漁ってから、教諭が説明を続けてゆく。一年の行事や注意、早速明日から始まる授業、教科書の配布。てきぱきと進められていく初日のホームルームは、明楽の耳を右から左へと通り抜けてゆく。
(っ……おさまって、おさまってよぉ……っお願いぃ……っ)
 12歳の少女が強いられるにはあまりに過酷な排泄衝動。ほとんど治まることもないそれは、断続的に激しい腹音を響かせ、猛烈な便意を叩きつけてくる。痛いほどの羞恥を感じながら、言うことを聞かないおなかを必死になってさすり、明楽は再度の発作が起きないよう祈る。
 だが……
「は…っ、はっ、はーっ、はふっ、はぁっ」
 ぎゅるぎゅるとねじり上げられる下腹部のうねり。もはや蠕動と呼ぶこともはばかられるような排泄器官の脈動は、まるでそこにひとつの生き物がうねっているかのようだ。
 一週間にも渡って蓄積されてきた排泄物は、汚らしいガス音を響かせて少女の腸内で暴れ回る。
 ぷぴっ、ぷぴゅ…ぶるっ、と絶え間なく音を漏らし続ける排泄孔はひっきりなしに盛り上がり、直腸を限界まで拡張して押し込められた中身を吐き出そうとする。

 ぐるるるぎゅるるるっぐぐううぅ、ごぽっ。

「うぁ……く、ふぁ……」
(おトイレ……うんち、うんちぃ、でちゃうっ……)
 全身全霊、思考の一片たりとも余すところなく総動員して、明楽は腹奥から込み上げてくる凶暴な排泄衝動に抗う。それでも時折我慢しきれずに漏れ出してしまうガスが、ひっきりなしにヒクつく排泄孔ではしたない音を立てる。ひり出されるモノはもはや気体だけとは言いきれず、明らかにガス以外の熱く湿ったなにかを吐き出すような汚らしい音を伴っていた。

 ぶぷっ、ぶぴりゅるっ!!

 そのたびにこの世のものとは思えない悪臭を漂わせる明楽は、だらしなく排泄孔が緩むたび、懸命に身体をよじってその腐臭を散らそうとしていた。
 少量ずつとは言え、自制をなくして立て続けにガスを漏らしてしまっている明楽のお腹は、もはやこのまま排泄をはじめてもおかしくなかった。すっかり柔らかくなった排泄孔はわずかな刺激だけで下着の中に汚らしい茶色の塊を吐きだそうとしている。

 ぷぷっ……ぷすっ……ぷちゅるっ……

 腸粘液でぬめる排泄孔はその内側の肉色が解るほどに盛り上がり、粘膜部分を外気に晒している。長時間酷使されてすっかり赤くなった腸粘膜はじんじんと疼き、むず痒さを伴って排泄欲を助長させている。
 ぱくぱくと口を開く排泄孔は、明楽が溜め込んだ排泄物を溶かした粘液をじわりじわりと漏らし、ぷちゅぷちゅと茶色い泡を立て、明楽の下着に隠しようもない茶色の染みを作っている。
 汗でぐっしょりと湿った感触のせいで、明楽はその汚れが何によるものなのか理解できずにいた。
「っは、……っふっ……っふ……」
 きりきりと高まりながら断続的に打ちつけられる排泄欲を堪えるたび、明楽の背筋がくねり、腰が揺れ、ぎゅっと閉じられた脚が硬直し、体重を乗せられた椅子がぎしぎしと軋む。
 額に首筋に汗を滲ませ、ハンカチを握り締めて息を詰める様子はまるで出産を控えた妊婦のような有様。しかし明楽が耐えに耐えておなかの中に抱え込んでいるものは、新たな生命などというモノとは正反対の、穢れた存在。溜め込んだ食物のなれの果てがこねくり回され、腐り果てた残りカスだ。
(やだ……なんで、なんで、わたし……っ……今日、入学式だったのに……っ、今日から、もうオトナ、なのにっ……)
 きちんとトイレに行くこともできず、、きちんと我慢もできない。うねる下腹部がまるで自分の未熟さの証のようで、すでに明楽のプライドはズタズタだった。
 とにかく一刻も早くこの場所から解放されて、うんちを済ませたい。おなかの中のうんちを残らず出してしまいたい。そのことしか考えることができない。
(ぁ、あッ、ダメッ!! ッで、でちゃ…うぅぅ……ッッ!!!)

 ぷ、ぷちゅっ、ぷちゅるッ……ぷすっ、ぷぅぅ……

 またも悪臭を撒き散らす明楽の排泄孔だが、当の明楽はそんな状況に構う余力がない。直腸に硬く詰まった便塊が孔内部にとどまっていることが、明楽の唯一のオモラシへの免罪符だ。
 すでに疲弊した括約筋はとうの昔に限界で、いつ力尽きてもおかしくない。わずかに緩んでガスを漏らす刺激さえ危険なものだ。ほんの少しでも油断すれば、たちまちのうちに下劣な卑肉の管と成り果てた明楽の排泄器官は、小さなおなかの中に辛うじて留めている汚辱の塊を残らず吐き出してしまうに違いない。
 蠕動運動で程良くこね上げられた直腸が折りたたまれては引き伸ばされ、次々と粘液にまみれた固形のうんちの塊が押し寄せてくる。もうこれ以上入らない場所に無理矢理ごつごつとした塊を押し込まれ、まるで排泄孔を犯されているかのような有様だ。
(ぁ、あっあっ、ま、待って、ダメ、だめぇ……)
 なるほど確かに、幼い排泄孔を襲う排泄衝動はいつ果てるとも無く明楽を蹂躙し続ける。教諭の話も上の空で、明楽はいつ果てるともない恥態を繰り広げていた。
「っ、ふ……ぁ」
 腹奥に猛烈な便意を飲み込んで、明楽はぎゅっと堪えていた息を吐いた。ごりゅるるぅっ、とガスが逆流する不快感に耐えきれず、身体を弛緩させる。
「ねえ、あなた?」
 不意に聞き覚えのある声がして、明楽は俯いていた顔を持ち上げる。
 そこには、入学式で明楽の隣に座っていたポニーテールの少女の姿があった。
「……えっ」
 いきなり話しかけられて、明楽は呆然と間の抜けた声をあげてしまう。
 まさか、彼女に自分の惨状を知られてしまったのでは――そう考えた明楽の背筋が冷たくなる。
 ポニーテールの女生徒は、吊り目気味の視線をさらに険しくし、怪訝なものでも見るように明楽を睨む。
「どうしたの? さっきから――具合でも悪いの?」
 まるで、そんなに辛いのにどうして自分でなにもできないのかと、そう蔑むような言葉。
 瞬間。

 ぐりゅっ、ごぼごぼぼっごきゅるるるぅううううっ!!

(あ、ぁうぁあっ!?)
 不意の緊張を強いられた自律神経に反応し、明楽の下腹部で激しい蠕動がたて続けに巻き起こる。うねる腸壁が一度は奥に押し戻された中身をこね回し、少女の排泄孔目掛けて再度押し寄せた。
 あまりにも早い第二派の到来緊急警報に、油断し無防備なところを晒していた明楽の下腹部はあっという間に占領されてしまう。ぼこぼことうねる濃密なガスの塊が熱い衝撃となって直腸で煮え滾る。
 急激な蠕動運動に腹腔が大きくよじれ、猛烈な便意が明楽の排泄器官に襲いかかった。

 ぐごっ、ごきゅるるるるぅぅっ!!

「ぁうぅう……っ!?」
 耐えきれないほどの下腹のうねりに身体を大きく曲げて、腹を押さ込んでしまう明楽。ポニーテールの少女が眉を潜める。
「ねえ、ちょっと?」
「っ、う……うぐっ、うっ、っ!!」
 気付かれぬように。不審がられぬように。それだけを考え、必死に言葉を継いでゆく。
(ダ…ッ、ダメ、ダメダメぇ……っ!! 出ちゃダメっ、ガマン、がマンんっ、ガまンんんん…〜〜ッッ!!)
 腹の中でダイナマイトが爆発したような心境だった。しかし、まさか春菜の目の前で脚をモジつかせたりおしりを押さえることができようはずもなく、明楽は渾身の力を込めて排泄孔を締め付ける。
 それでもわずかずつ漏れ出す汚辱のガスは、小刻みに震える少女のスカートの中に茶色の芳香を漂わせてゆく。
 そして、にち、にち、と押し出される硬く押し固められた焦げ茶色の塊が、明楽の小さなすぼまりを無理矢理こじ開けてゆく。灼熱の感触と共に拡張される排泄孔に、明楽は小刻みに震えながら声にならない悲鳴を上げる。
「っ……〜〜ッッ、んッッ……っ!!」
「ねえ、ちょっと、どうしたの? やっぱり具合悪いの? そうなら早く保健室に――」
 机を握り締め、前傾姿勢になったまま動けなくなってしまった明楽。もはや猛烈な便意のなすがまま蹂躙させるしか道は残されていない。

 ごりゅ、ごぽぽっ。

「あ、あっ」
 耐え切れず、明楽の恥ずかしいすぼまりがぷすっとガスを吐き出す。
(あ、くぅぅぅ……っ!?)

 ぶっ、ぷ、ぷっ、ぷぅっ、ぷぅうっ……ぷぴっ、ぷすっ……

 滑稽にすら聞こえる断続的な放屁。蠕動する直腸のうねりがそのままお尻の出口へと繋がり、明楽は少しずつおならを漏らし続ける。そのわずかな放屁でさえ、周囲にははっきりと悟られてもおかしくないほどの悪臭を生んでいた。
 一週間……まだ小学生だった時から少女の腹腔に溜め込まれ、腐敗し続けたガスはまるでおさまることを知らない。
 いまやおそらく明楽の下着は言い訳のできないほど汚れているだろう。
 少女の意思を無視して、朝から続く下腹部のうねりは腹腔を余すところなく侵し、無慈悲に蹂躙を繰り返していた。繰り返される蠕動にはまだ消化作用を終えていない内容物も追加され、ごぼごぼと腐った泥のような濁流も身体の奥で渦巻いている。
 少女の直腸がこねあげた塊は、明楽の必死の我慢すら突き破り清純を汚そうと暴れつづける。
(っ、おなかイタイ……やだよぅ……っ、やだよぉ……)

 きゅるるるるるっ、ぐきゅううぅう……

 まるでそこに別の生命が息づくかのように、明楽の下腹部が蠢く。少女の消化器官の終点に向けて排泄物がのたうちながら降り下ってゆく。
 腹圧が高まり、内容物を押し出そうと蠕動を繰り返す。
 思わず足を止めてしまいながら、ごぼごぼと蠢く便意を堪え、明楽はスカートの上からさりげなく下着を掴んだ。
 ぎりぎりのところで踏みとどまろうとした明楽の我慢は――
「ちょっと、ねえっ!! トイレ? だったら早く行ってきなさいってばっ」
 小声で囁かれた苛立ちの混じる声に、限界を迎えた。
「っっ――――!?」
 薄い下着一枚に守られた少女の可憐な下腹部の奥底で、内容物を吐き出そうと肉の管が暴れ回る。 
 うんちを、がまんする。
 いまや明楽の意識は、たったそれだけのために存在しているといっても過言ではなかった。恥も外聞もなくおしりを押さえ、最悪の事態だけを必死に先延ばしにしている。
 長時間の我慢を強いられた少女の括約筋は焼きついたように熱を持ち、盛り上がった排泄孔はほんのりと薄紅色に変わっている。猛烈な便意に蹂躙された少女の幼い孔は、じくじくと痺れて甘いむず痒さを伝播させる。断続的に巻き起こる排泄衝動は意志を無視して消化器官を支配し、生命活動の残り滓を小さな孔から絞りだそうと蠕動を繰り返す。
 そして、
「――先生、植野さんがトイレです!!」
 ポニーテールの少女が、教室にはっきりと聞こえるような大きな声でそう叫んだ。


 (続く)
 

2010/04/01 我慢長編  

明楽の入学式・7

 暴れ回るおなかを必死になだめながら、明楽は小さくしゃくりあげる。
(でちゃう……おなら、また出ちゃうよぉ……)
 無論、明楽が本当に出してしまいたいのはオナラではない。
 しかし、トイレにも行けず、漏らしたくもなければ、わずかずつでもガスを出すしかない。そうして少しでも腹腔をなだめるほかの選択肢は残されていなかった。
 繰り返される蠕動運動は凝り固まった排泄器官をじわじわと揉みほぐし、長い間の便秘ですっかり忘れ去られていた排泄機能を活性化させている。
(だ、だめ……)
 何かにすがるように、明楽は机の端を握り締めた。じっとりと汗をかいた手のひらがぬるぬると不快な感触を示す。たとえどれだけ我慢を続けても、明楽のおなかに詰まった中身が消えてなくなることはないのだ。
 下着の下でぽこりと膨らんだ明楽の下腹部では、腸の中で水分を吸われ固まった固形物がぐねぐねと蠢いている。さらにその奥では、まだはっきりとした形を持たない大量の排泄物が腐った泥のように渦巻いていた。

 ごきゅぅううう……

 明楽が下腹部の重みを再確認したそのとき、激烈なうねりが腹奥からお尻のすぐ真上へと沸き起こる。それは激しい爆発の予兆だ。狭い直腸の中で、蠕動を伴った粘膜が激しくくねり、大きなガスの気泡が立て続けに弾ける。すでに限界まで内容物を詰めこまれた直腸に、怒涛の勢いで圧縮されたガスが流れ込んだ。
「っ―――!?」

 ごぽっ、ぐきゅ、ごぷりゅぷっ。
 ぷ、ぷっ、ぶぴっ、ぶりゅぶぴぷぷぅっ!!

(ぁ、だめ、ダメっ、だめぇっ!!?)
 圧倒的な密度と質量、それをも超える速度で込み上げてきたガスを抑え込むため、明楽は全身を鉄のように硬直させ、圧力の集中する排泄孔を渾身の力で絞り上げる。しかし、少女の意思とは別に蠢く排泄器官はそんな抵抗をやすやすと押し砕き、熱い衝撃が直腸粘膜を突き破って弾ける。限界まで括約筋を引き絞られ、収縮しながらも内圧にひくひくと震える少女の小さな排泄孔。そのわずかな隙間を貫いて、瞬く間に汚らしいガスの塊が外へと排出される。

 ぶぶりゅっ、ぶすっ…ぷぅっ!! ぶぶりゅぶぉびぴいぃッ!!

 クラスのざわめきを掻き消すかのように、猛烈な放屁音が響き渡る。
 その激しい音に誰もが呆気に取られ、一瞬、教室の中に奇妙な沈黙が落ちた。
「ぁ……や、……っ」
 喉から飛び出しそうな悲鳴を抑え、明楽はぎゅっと目を閉じた。
「っ……!!」
 二つ隣の席で、がたんと机を揺らして女性とが飛び退いた。
 同時に、明楽の周囲の席から数名の生徒が次々と立ち上がる。それに呼応するかのように、まるで空気を塗り替えるかのようなすさまじい悪臭があたりに巻き起こった。
 ざわめきは瞬く間に蘇り、あっという間に教室全体を包み込んだ。窓際に駆け寄った生徒の一人が窓を全開にし、隣の生徒がそれに倣う。
「うわッ……ちょ、なによコレっ…!?」
「うぷ……ね、ねえ、これって……さっきの」
「ウソぉ……さっきのってひょっとしてウチのクラスだったの? ……止めてよもう……最悪っ……下品すぎっ」
「何食べたらこんなになるワケ? ……ねえ、そっちの窓も開けてっ!!」
 これで通算3回目となるガスの放出だった。
 しかも回数を経るごとに悪臭の度合いは増している。これは活発な排泄器官の蠕動によるもので、明楽の身体が本人の意思を無視してどんどんと排泄の準備を整えていることの証左であった。
 突発事態の毒ガステロに騒然となったクラスの中で、明楽は羞恥と下腹部の苦痛に動くことができず、ただぎゅっと身を縮こまらせる。
(で……でちゃった……っ)
 言葉にすれば単純な、けれどそれどころでは済まされない最悪の事態。
 これからの一年を共に過ごしてゆくクラスメイト達の前で、汚辱の塊のようなガスを排泄してしまった明楽。これはもはや決定的な事態といっても良かった。
 だが――
「っ…………」
 顔を背け、眉をよじりながらもクラスメイトの視線は周囲をぐるぐるとさ迷い、明楽を特定するには至らない。まだ見知らぬ顔が多いことや、雑踏の中で席を立ち歩いていた生徒も多く、誰が犯人なのかまでをはっきりと理解した生徒はいなかったのだ。
 騒然となるクラスの中で、これまでの友好ムードは一転。猜疑に満ちた視線が教室を飛び回り、毒ガステロの犯人を見つけ出そうとする。
 となりのグループでは、疑心暗鬼に陥った生徒のグループがそれぞれに顔を見合わせて、突如訪れた大惨事の犯人が自分ではないことをアピールしあってていた。
「ねえねえ、今の……」
「ち、ちがうって。何言ってんの? もう、あははっ!!」
「私じゃないってば。もう、誰よいまの!?」
「あのさ、ひょっとしてあの子じゃない……?」
「ホント? 信じらんない……朝からずっと……?」
「ウソぉ……」
「え、ちょっと待ってよ、違うわよ!?」
 ちらちらと周りを窺いながら囁き交わすクラスメイト達。もちろん表立って認めるわけにも行かず、皆が軽蔑を滲ませながらも、赤く染まった顔を俯けている。犯人を特定できないゆえに明確な非難にはならない澱んだ敵意が、不穏な空気を加速させてゆく。
 そんな中――
 明楽は、少しでもその非難の声が遠のくように願いながらただじっと沈黙を貫き、必死になって下腹部の衝動と戦っていた。
「くぅぅッ……」
(お願い、おさまってぇ……い、いまはだめ、“今”だけはだめぇ!! ……ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから……ッ!!)
 全身全霊をかけて排泄孔を絞り、我慢に総力をそそがねばならない明楽にできることは、そうやって祈ることだけだった。泣きじゃくりそうになるのを必死に堪え、じっとじっと身を固くして、猛烈な便意がわずかでもおとなしくなってくれることを願う。
 あれだけのガスを吐き出してなお、明楽の下腹部はぐるぐるとうねっている。少女の膨らんだ腹腔に溜まるガスは活性化を続け、すぐにも今と同じかそれ以上の規模の第2、第3の茶色い悲劇をもたらす予感を色濃く感じさせていた。
(おねがい……っ)
 それはもはや無駄な行為にも思えた。
 だが、もはやこの哀れな少女には、入学式早々、教室でのオモラシという恐怖の前に祈るくらいのことしか許されていなかったのだ。
 そして――
 はたしてその祈りが通じたか。
 途方も無い精神力で耐え続けた明楽に根負けしたかのように、きりきりと激しく蠢いていた下腹部が、わずかに緩む。ほんのわずか、休まることのない大荒れの狭間に生まれたささやかな休息がやってきたのだ。
 ゆっくりと安堵の息を漏らす明楽。手のひらにはじっとりと熱が篭り、背中は嫌な汗をかいてシャツをべっとりと肌に張りつかせている。
(は……っ、は……っ、く……)
 どうにかほんの少しだけ産まれた余裕に、肩を震わせ息をする明楽。
 緊張していた全身がわずかに弛緩し、じわりと汗を滲ませた。
 だがそれも一時のこと。すぐにまたそれを上回る猛烈な大波が押し寄せるだろうことを明楽は悟っていた。
(い……行かなきゃ…トイレ、…お手洗いっ……)
 ぎゅっと唇を噛み、明楽は覚悟を決める。
 次の発作にはきっと耐えられないであろう事を、明楽は本能的に気付いていた。少女として最悪の結果を迎える前に、一刻も早く排泄を済ませてしまわなければならなかった。
(いまならきっと空いてるし……ちょ、ちょっとくらいなら、外に行っても気づかれないはず……!!)
 まだ相手の顔もはっきりと解らない新入生クラスであったとしても、ここまであからさまな状況の中で机にしがみ付いたまま動こうとしない明楽は、あまりにも不自然で怪しすぎる。そのためのカモフラージュにもなるはずだった。
 わずかにできた余裕を最大限利用すべく、明楽がおなかを庇いながら慎重に席を立とうとした、その時。
 がらりと教室のドアが開いた。
「よーし、席に着け。遅れて済まんな」
 姿を見せたのは、クラスの担任である男性教諭。出席簿と大量のプリントを抱えて登場した担任の姿に、クラスメイトたちは慌てて席に戻る。
「えー、静かに、静かに。ちょっと予定が遅れているんでこのままホームルームに入るぞ。すぐ終わるから席につけー」
 手慣れた風に教卓に付いた教諭は、明楽のことなどお構いなく、教室内を見回してそう宣言した。
 またもトイレに行く機会を奪われて、少女の下腹部はきゅぅと差し込むように鈍く痛む。
「ぁ……っ」
「……ああ、その前に少しだけ休憩にするか。トイレなど行っておきたいものは今のうちに行っておきなさい」
 教諭の声に、しかし1−Cのクラスメイトは誰一人立ち上がろうとしなかった。
 誰の胸にも、入学式と教室の中、立て続けに3度にも渡って毒ガステロを引き起こした誰かの存在が強くこびり付いている。このタイミングでトイレに立てば『ずっとうんちを我慢していた犯人』にされかねなかった。
 多感な中学生の少女達が新生活の最初の日に、そんな後ろ指をさされることに耐えられるわけがない。
「なんだ、誰もいないのか? ……じゃあこのまま続けよう。いいな?」
 もう一度窺うように教師が教室の中を見回す。
 しかし、一度できてしまった『トイレには行けない雰囲気』の中でそんなことをしても逆効果でしかない。
「よし、じゃあまずプリントを配る。前から回して、足りなければ後ろで調節しておきなさい」
(あ……ああ…っ)
 まさに最悪のタイミング。明楽がトイレに辿り着くための最後の機会は、こうして失われてしまっていた。浮かせた腰が、すとんと椅子の上に落ちて、また明楽の下腹をぐきゅぅうるるる……と唸らせる。
 今なら、トイレはさっきの時よりもずっとずっと空いているはずだ。明楽のおなかがどうしようもなく壊れてしまっていたとしても、誰もいない個室で、回りを気にせずすっきりする事ができるはずだった。
(かみさま……っ)
 長い長い、果てしない我慢の末、やっと訪れた千載一遇のチャンスを前に、明楽は黙ってそれを見過ごすしか許されなかった。



 (続く)
 

2010/04/01 我慢長編